アメリカ行きのビザが下りました。
…といっても私の話では無く、ベトナム人の友人の話。アメリカに留学しグラフィックデザインを学ぶべく面接を受け、先日無事にF-1ビザ(学生ビザ)が取得できたというのです。
で、すぐに渡米してしまうというので、その前に一度食事をしよう…となったのですが、「ベジタリアン食にしてほしい」とのリクエストが。どうやら「ビザが下りたら1週間は菜食しか食べないルール」を自身に課して願掛けしていたとのこと。誓いを立てることで絶大な力を得る代わり、それを破ってしまったら一気に反転して災いが訪れるタイプのやつだ…。これは協力しない訳にはいかないな。
そんな流れでフーニャン区のベジタリアンレストラン「Mầm Vegetarian(マム・ベジタリアン)」に行ってきました。
「Mầm Vegetarian」の雰囲気
「Mầm Vegetarian」は、ホーチミン市・フーニャン区のグエンヴァンチョイ (Nguyễn Văn Trỗi) 通りに沿いに位置します。市内中心部と空港方面を結ぶ大きな通りですね。ちなみに店名の「Mầm」は「新芽」の意。
レストランの入口は、通りから少し入った、奥まったところ。市内の大動脈のような通りの上に位置するとは思えない隠れ家感。
店内に入ると…大混雑。「予約してますか?」と聞かれましたが、何とか空いている席に着くことができました。
内装からは、暗褐色をベースにグリーンを取り入れた、高級感がありながらも温かみのある雰囲気を感じます。木、籐、竹などの素材を使用し、ベトナム風と洋風がフュージョンしたモダンな空間。大きな窓から見える緑も自然を感じさせてくれて良い。いやあー、ここはダラットかい?と、思いつつ、カメラを取り出していじっていると…
「Anh ơi(ちょっとお兄さん)! うんたらかんたら〜〜」
向かいのテーブルに座っていたお姉さんに突然声をかけられました。ヒイッ怒られた!?
…と思ったのですが、話を聞くと、どうやらそのお姉さんはこのレストランの広報マネージャー。「あなたのカメラで宣材写真を撮ってくれないか?お礼にデザートをサービスする」とのこと。
…まあ、お断りしたのですが。いやだって、プロじゃないし…。
友人曰く「このレストランはスマホで撮った写真しか宣材写真が無いのでは」とのことでしたが、そもそもこの規模のレストランだったらカメラマンを雇うものではなかろうか。
「Mầm Vegetarian」のメニュー
「Mầm Vegetarian」のメニューは、公式サイトに記載…というか、Google DriveにPDFファイルが上がっています。英語も併記。また、卵・乳を使用するメニューはその旨が明記されているため、厳格なベジタリアンも安心。
メニューはバラエティ豊か。ベトナム料理のみならず、インド料理・タイ料理・中華料理と、幅広いラインナップです。
きのこをチャーシューに見立てた、こちらの「Cantonese Grilled Mushroom Rice」が気になって注文しようとしたのですが品切れとのこと。代わりに友人が選んだのはタイ料理でお馴染み「Pineapple Fried Rice(パイナップルチャーハン)」…だったのですが、これ卵使ってるけど大丈夫?
「まあ、いいです。」いいのか…。誓いを破ったことで厄災が降り掛かっても知らないゾ。アメリカ行きのフライトで隣席が巨体&腋臭の欧米人になる、とか。
「Mầm Vegetarian」の料理を実食
まずはドリンクの「Sâm Hoa Cúc Nhãn Nhục(菊花茶)」39,000ドン。菊の花が浮いていて、見た目麗しい。
「Pani Puri」106,000ドン。インド料理のひとつであり、主に街なかの屋台で売られるようなお手軽スナック「パニプリ」を、大胆かつお洒落にアレンジ。酸っぱ辛いソース(本場のものは緑色かつ、もっと水っぽい)を空洞部分に注ぎいただきます。
角切り野菜のシャキシャキと瑞々しい食感とともに、甘さ・辛さ、芳しい複雑なスパイスの香りが口内に広がります。すべてがバランスよく混ざり合い、最後にミントの爽やかさだけが残る感じ。技ありな一品だ…。
「Đậu Hủ Tứ Xuyên」96,000ドン。何のことはない、麻婆豆腐ですね。ひき肉は大豆ミートで代用。
掬ってみると…とろみは殆ど無く水っぽいテクスチャであり、スープ料理のよう。大豆ミートの他、きのこや根菜の粗いみじん切りが入っています。慣れ親しんだ麻婆豆腐では無いけど、これはこれで。
「Cơm Chiên Trái Thơm」106,000ドン。パイナップルチャーハンですね。日本でも稀に扱うタイ料理屋がありますが、ベトナム人的には「タイレストランに行ったらコレ!」というほどの定番タイ料理らしい(友人情報)。ベトナムだとパイナップルが安いから、日本ほど値が張らなくて良いですね。
パラパラのチャーハンの中に混じるパイナップル…ですが、食べると違和感は無い。もっとパイナップルの果汁に侵食されて甘々になっているものと思っていたけど、そんなことは無かった。あまり熟していないものを使っているのかな。
はい、即席麻婆丼です。すーぐこういうことする。
デザートのアイス…って、注文してないよ?
どうやら、先ほど声をかけてきたお姉さん曰く、「宣材写真は引き受けなくていいから、デザートをサービスさせてほしい」とのこと。え、そんなことある!?新手の詐欺じゃないよね?(失礼)
友人が言うには、「外国人が珍しいからじゃないか」とのこと。50代くらいのマダム店員さんもあれこれ英語で話しかけてくれるし、ちやほやされっぱなしだな…。なんか久々に、ベトナムの社会構造外に居る「お客様」として扱われた気がしますが、不思議と心地良い。
お会計は392,000ドン(≒2,288円)。え、やっす!VATはメニュー価格込みで、サービス料も無し、とな?
ちなみにアイスクリームは本当にサービスでした。恐縮してしまうわね…ほんと、ごちそうさまでした。
ビザ取得のお礼に寺院へ行く
この日はレストランで食事するほか、タンビン (Tân Bình) 区の寺院「Chùa Phổ Quang(フォー・クアン寺院)」を訪れました。(Googleマップ)
驚くべきはその巨大さ。なんといっても、こんなにも立派な地下駐輪場が併設されているのです。
どうやらホーチミン市が直接管理している寺院らしく、豊富に資金が投入されていることが伺えますな…。
お茶は無料、お線香も3本まで無料…と至れり尽くせり。
ここにやって来たのは、ビザが下りたお礼のため。友人は特に敬虔な仏教徒ではないらしいですが、どうやらこの寺院は国外のビザを申請する人がよく参拝に訪れるらしい。何かそういう謂れがあるのかと尋ねたところ、「空港が近いから」とのことでした。こじつけやんか…
私も倣ってお祈り。写真で見て分かる私の姿勢の悪さよ。
ベトナムをはじめとする東南アジア諸国の寺院によく植えられている、キャノンボールツリー。『平家物語』でお馴染み、沙羅双樹に見立てているのだそう。縁起物ということで、みなさん樹の下で手を出して花が落ちてくるのを待っています。
本堂に祀られているのは釈迦牟尼仏。
左右には釈迦を護る護法神(金剛力士)。筋骨隆々な姿に健康を祈願したい。
その後はショッピングモールで買い物をしたり(誰か、左の写真のちいかわとうさぎのキメラみたいなぬいぐるみ買ってみてほしい)、カフェでお茶をしたりして、友人のバイクで自宅まで送り届けてもらい解散。その後「友達になってくれてありがとう」というメッセージが届き、嬉しさ半分、今際の別れのような悲しさ半分で切なくなってしまった。