バイクや車で賑わう大通りから一本入った路地裏で、思わぬお店に出会うことがベトナム生活の醍醐味。そして今回ご紹介するのも、そんな発見の喜びを体現したような一軒。
アメリカンスタイルの独創的なスイーツが人々を魅了するベーカリーカフェ「Dulce de Saigon(ドゥルセ・デ・サイゴン)」をご紹介します。
「Dulce de Saigon」の場所・外観

ホーチミン市旧1区と旧3区を東西に貫く主要な通り、グエンティミンカイ (Nguyễn Thị Minh Khai) 通りへとやって来ました。交通量が非常に多く、常に活気に満ちたこのエリアですが、目的地はヘムの中。

ローカルな生活感が漂う風景の中にも、カフェやバーが点在する、どこかスタイリッシュな路地裏。

そして現れたクリーム色の建物、ここが「Dulce de Saigon」です。大きなガラス窓には、ハロウィンのポップで可愛らしいイラストが描かれ、静かなヘムの中でひときわ目を引きますね。そう言えば、次の季節イベントと言えばハロウィンか…。
「Dulce de Saigon」の内装・雰囲気

こちらのお店を立ち上げたのは、ベトナム人のMinh Thư氏とアメリカ人のGarret Nelson氏夫妻。その物語は2019年、自宅アパートの小さなキッチンから始まります。「美味しいシナモンロールが食べたい」というシンプルな想いをきっかけに、趣味で作ったお菓子が口コミで評判に。

店名の「Dulce(ドゥルセ)」は、スペイン語で「甘い」という意味。アメリカ西海岸で育ったGarret氏が、子供時代に親しんだメキシコ系ベーカリーの甘く懐かしい思い出に由来しているそうな。元々はデリバリー専門店としてスタートしたものの、現在はこちらの路地裏に店舗を構えるまでに。そんな二人の情熱とルーツが詰まったお店です。

看板犬であろう黒い犬さん。人見知りすることなく客席エリアで寛いでおり、お店の持つアットホームな雰囲気を象徴する存在なのかも。

2階に上がると、広々としたラウンジのような空間が広がっています。ゆっくりと食事やカフェタイムを楽しむための客席がメイン。

カラフルなテラゾー柄のテーブル、ベルベット調の柔らかなソファ、スタイリッシュな椅子など、様々なタイプの座席があります。
インタビュー記事で「一日中座って仕事やくつろぎの時間を過ごすのに理想的な場所」と紹介されている通り、あちこちにコンセントも配置されており、ちょっとした作業のために利用するのも良さげですね。

ヘムの緑を望む半屋外のカウンター席では、ベトナムらしい風景を眺めながら静かな時間を過ごせます。
「Dulce de Saigon」のメニュー

メニューの多彩さと独創性もまた「Dulce de Saigon」の魅力。特に、この店の原点ともいえるクッキーと「Cinnarolls(シナモンロール)」を始めとするペイストリー類は要チェックだぞ。

看板商品の一つが「Miso Cornflake Marshmallow」。味噌、マシュマロ、コーンフレークという、あまりにも情報量過多な組み合わせです。

ペイストリーの中でもケーキ類はこちらのショーケースに。

季節限定の「Pumpkin Cheesecake」や、定番の「New York Cheesecake」、「Devil’s Food Cake」など、アメリカンテイスト溢れるケーキが並びます。

スイーツだけでなく食事系のメニューもあります。「Sandwich by Dulce」を謳い、上述のペイストリーとは別枠の扱いみたい。ブランディングが上手いじゃねえか(称賛)。
自家製のタイガーブレッドやフォカチャを使ったサンドイッチは、「Horsey Beef」(ローストビーフ)や「Tokyo Chick」(照り焼きチキン)など、世界各国のテイストを取り入れた独創的なラインナップ。タイガーブレッドは、ベトナム人が好む「サクサクの皮」を意識して選んだとか。

ドリンクも、「Salted Caramel Mocha」といったシグネチャーメニューから自家製ソーダまで、食事やスイーツのお供にぴったりの一杯が見つかりはず。
独創的なペイストリー群を実食

「Miso Cornflake Marshmallow」80,000ドンと、「Earl Grey」40,000ドン。

お店のオリジナリティが凝縮された「Miso Cornflake Marshmallow」にチャレンジ。クッキー1枚がケーキと同額か…と思いましたが、間近で見るとでかい。子どもの手のひらサイズくらいある大きなクッキーは、見た目からして具材がぎっしり。

外側はサクッ、中はしっとり。そこにコーンフレークのザクザク感、濃厚なチョコレートのなめらかさ、そしてマシュマロのもっちり感が一体となって押し寄せます。
何と言っても、その味わい。濃厚なチョコレートの甘みの後を追いかける塩気。これだけなら「塩チョコクッキー」かな?と思えますが、そこに畳み掛けるのが味噌由来のコク。バランス感覚が絶妙すぎる。忘れられない、新感覚の一品。

アールグレイティーはスリランカの有名ブランド「Dilmah」のものですが…まあ、ショバ代かなあ。ベルガモットの爽やかな香りが、クッキーの濃厚な味わいをすっきりと受け止め、口の中をリフレッシュしてくれて、相性は良し。

さて、今回の主目的は、ホームパーティーの手土産としてケーキを購入すること。ということで3品購入しました。

淡いピンク色の可愛いボックスをオープン。箱を持ってお店からメトロ(ベンタイン駅)まで徒歩移動→アンフー駅まで乗車したのですが、特に崩れてなくて良かった。

右から「Lemon Meringue Cake」80,000ドン。雲のように絞られたメレンゲが芸術的な一品。メレンゲのしゅわっと軽い甘さと、レモンカードの鮮烈な酸味のバランスが絶妙。きゅんです。土台のクラスト生地のザクザク感も加わり、食感も味わいもパーフェクト。
真ん中は「Pumpkin Cheesecake」90,000ドン。オレンジとクリーム色のマーブル模様が美しい、おそらくは季節限定のケーキ。かぼちゃ本来の優しい甘みと、クリームチーズの爽やかな酸味が調和。秋の訪れを感じさせてくれる優しい味わいです。なお、常夏。

左が「Basque Burnt Cheesecake」80,000ドン。表面の真っ黒な焦げ目がインパクト大。このほろ苦さが、チーズの濃厚なコクと甘みを引き立てる。中心部分はふんわりとなめらかで、口に入れた瞬間にとろける食感。ワインにも合いそうです。
全体的に、サイズ大きめで食べ応えあり&ガツンとした甘さが特徴。オーナーのルーツを感じさせる、アメリカ~ンな仕上がりのスイーツでございました。とにかく糖分を求めるアリ人間さんは是非。