ホーチミン市に数多存在するオープン・エア式のレストラン。「暑くないの?」とお思いの方も居るかもしれませんが、殆どのお店は夕方以降にオープン。時期にもよるものの薄暮を迎えた時間帯は案外涼しく、夜風を浴びながらいただくディナーはまた格別です。
また、料理のみならず、店内に趣向を凝らしたお店も多く、今回ご紹介するお店もそのひとつ。
本記事では、工場跡地のような内装が楽しい、ホーチミン市1区のインダストリアルスタイル・レストラン「Trạm Hầm(チャム・ハム)」をご紹介します。
「Trạm Hầm」の場所・外観

やって来たのは、ホーチミン市1区・スオングエットアイン (Sương Nguyệt Anh) 通り。所謂「サイゴン」と呼ばれるホーチミン市ど真ん中付近のエリアであり、旅行者が宿泊するエリアからも徒歩またはタクシーで容易にアクセス可能です。
なおこの通りは夜になると、歓楽的雰囲気の中で客をもてなすことを生業とするお店(「韓カラ」というらしい)が目立つようになりますが、日本人街・レタントン通り周辺のように強引な客引き等は無いので自ら近づくことをしなければ安全です。

そしてこちらが今回ご紹介する「Trạm Hầm」。2023年末頃にオープンした、比較的新しいお店です。
ホーチミン市内ではもう1店、3区にも店舗を構えているようなのですが、単なる支店ではない「プレミアム業態」らしく、その名も「Trạm Hầm Premium」。どの辺りがプレミアムなのか、いずれ確かめてみたいところ。また、ホーチミン市の外国人駐在員ハブであるタオディエン (Thảo Điền) エリアへの出店も予定しているそうです。

何にせよ本日やって来たのは1区店。早速お店に入りましょう。巨大な換気扇の廃材を使って作られたかのような、ヴィンテージ感溢れるドア、カッコいいですね!
「Trạm Hầm」の内装・雰囲気
わっ。

店内に足を踏み入れると、同行者と共に思わず声を上げてしまいました。工場や倉庫跡を改装したかのような広々とした、それでいてインダストリアルな雰囲気。古材を使ったインテリアや錆びた金属の装飾が、無骨ながらも味わい深い空間を演出しているのです。

一方、フェイクではない生のグリーンや、木目の椅子・テーブルが、生気に満ちた印象を店内に与えてくれています。退廃的なだけではない美しさがありました。

また、各テーブルに置かれたキャンドルランタンやステンレス製のカップが、どことなくキャンプなどのアウトドア感を想起させて、テンションが上がりますね。

さらに、キッチンはダイナミックなガラス張りのオープンキッチンスタイル。こちらのお店はグリル料理が売りのひとつのようで、シェフの手捌きを間近で眺めることができます。なお、当然ながらグリル付近の座席は暑いので注意。

オープン・エアのレストランですが、雨が降った際は折りたたみ式の屋根が張れるようになっています。
「Trạm Hầm」のメニュー
「Trạm Hầm」のメニューは紙ではなくタブレット。ベトナム語・英語メニューの両方あり。






食事メニューの一例として、「APPETIZER」「GRILL」「BBQ」「DESSERT」の一部を掲載します。他にも一品料理やスープ料理のページがありますよ。「BBQ」のメニューは3ページに渡るなど、力の入れようが伺えます。あと、「DESSERT」のページに添えられた「FINAL CHAPTER」というフレーズが良いですね。




何を注文するか迷ったら、「COMBO」を注文するのが良いと思います。2人前・3〜4人前・5〜6人前のコンボが用意されており、グループの特性に応じて選択が可能。我々は5人で訪れたので、「COMBO 4」を注文することにしました。


カクテル・モクテルにも気合が入っています。正直、ベトナム基準で考えると外国人向けのバー並みの価格ではありますが、見た目にも麗しいこれらのドリンクを1杯くらい注文してみるのも良いかも。あ、私たちは注文しませんでした(バッサリ)。


ワイン・クラフトビール・リキュール・その他。下戸的には、ソフトドリンクの選択肢が少ないのが残念。フレッシュジュースなんかを置いといてほしかったかなあ。
5〜6人向き「COMBO 4」一挙紹介

まずは3品やって来ました。

そして間髪入れず、「COMBO 4」のメニューが全て揃ってしまった。早すぎィ!
この脅威の提供スピード、理由はひとえに「スタッフの数が多いから」に尽きるでしょう。入店したのが17時半頃だったので客席はまだ空席が目立ったのですが、一方で店員の数は過剰。明らかに手持ち無沙汰になってるスタッフも居たし。
まあ、スタッフの数が多いのはベトナムあるあるではありますし、用があるのに店員が捕まらない…という状況よりは全然良いのだけど。

「Smoked duck breast salad」、鴨胸肉のスモークのサラダ仕立てです。きゃあ見て、このサラダ、お花さんが乗ってるの。それ以外にも、ビーツやイチゴが用いられていたり、ベビーリーフが散らされているなど食材のチョイスが凝っており、取ってつけたようなサラダでは決してありません。

もう一つのサラダは「Kale salad & smoked beef with passion fruit sauce」。ケールとスモークビーフのサラダ、パッションフルーツドレッシングがけ。
どちらもほのかに色付いたスモークリングが美しいですね。鴨肉のスモークはしっとり柔らかな食感が楽しめる一方、牛肉のスモークはウェルダンならではのしっかりとした歯応えで「これぞ牛肉」といった肉々しい味わいです。スモークビーフに関しては、人によっては固いと感じるかもしれない。

「Sticky rice roasted in bamboo」。東南アジア全域でポピュラーな、竹筒の中にもち米を入れて焼いた料理です。ベトナムでは「Cơm lam(コムラム)」と呼ばれ、主に北部〜中央高原地帯で食されている模様。

店員さんが細かく切り分けてくれました。添えられているのは、塩・黒ゴマ・ピーナッツを混ぜたもの。
本来であればこの後提供されるであろう、バーベキュー料理と一緒にいただくのがセオリー…なのですが、先に一切れ食べてみると…うんまい!シンプルな調理法ながら米の甘みが引き出され、グリルしたことによる香ばしさのアロマも加わり最強の主食となりました。
ちなみに、冷めても中は案外もちもちのままですが、やはり出来たてを食べるのが一番だと思います。

「Grilled oysters with cheese」。路上の貝料理屋でもお馴染み、牡蠣のチーズ焼きですね。

美味しいのですが、チーズはローカルのチーズ焼きでよくある甘ーいヤツなので、好き嫌い分かれるかも。外国人にもフレンドリーなレストランですが、味付けは外国人向けに振っている…というわけでは無さそうだな。

「Shrimps curry with bread」。海老カレーにパンが付いてきました。
カレーは東南アジアでよく見られる、ココナッツミルクを使ったマイルドなもの。しかしながら意外と辛さもあり、食べ進めるうちに唐辛子がピリッと効いてきます。
ちなみに具材の海老ですが、ナイフとフォークで適当にカチャカチャしているだけでお頭と尾を剥がすことができました。食べやすいように下処理してくれていたのかな?気配りが光ります。

「Pork skirt steak with sweet & sour fish sauce」。「Skirt」とは豚のハラミのことですね。
魚醤ベースのソースではありますが、グリルされたことで特有の匂いは飛び、程よい塩気と旨味だけが残っています。添えられたカラマンシーを絞っても良し。
ハラミは、柔らかいながら「くにくに」とした弾力もありたまらない食感。下に敷かれているのは、揚げたレモングラスかな?口に入れても繊維が残る感じはありませんでした。

串焼き3本。「Grilled pork belly with clausena indica leaves」「Grilled beef with ant salt」「Spicy grilled octopus」の3種類です。
豚肉の串焼きに添えられた「Clausena indica leaves」とは、「クラウセナ」という柑橘類の葉…らしい。何もかも初めて聞く名前すぎて全然分からない。豚肉自体は、肉汁が詰まっていて柔らか、そしてスパイスも効いていて美味。同じく串に刺さっていた玉ねぎやズッキーニも、とろとろだし豚肉の旨味を吸っていて最高です。
牛肉の串焼きは一見フツーですが、かかっているのは「Ant salt」、つまり「蟻塩」です。誤植ではありません。どうやら、山岳地帯で食べられる調味料である模様。とは言え、メニューをよく見ていなければ何も気にせずに食べられる見た目をしています。そもそも周囲は暗いですし。蟻特有の何かを感じる、ということもありませんでした。スパイシーで美味しい、ただただ普通の牛の串焼きとしていただけます。
タコの串焼きは柔らかく美味…なのですが、これが結構辛い!意外なところに伏兵が居たよ…。とは言え、一度に多量に食べなければ、辛いものが得意でない人でも食べられると思います。

ラスト、「Roasted sweet potatoes with cheese」。じっくりとグリルしたさつまいもに、チーズを乗せたもの。

予想通り、しっとり・ねっとり食感、そして甘い。時間をかけて火を通したことが分かる仕上がりで、さながらデザートのような焼き芋です。
半切れでもかなりヘヴィーなのですが、5人に対して提供されたのは6切れ。同行いただいていた日本からの出張者に「せっかくだから」と1切れ押し付け…じゃなくてお譲りしました。てへ。
甘さ全振りな日本のさつまいも程ではないものの、ベトナムのさつまいもも品種改良が進んでいるみたいで、適当に買って適当に調理しても、ねっとりしていて甘いのですよね。そもそも、スーパーでは日本ルーツの品種のさつまいもが売ってるし(産地はベトナム)。

ここで追加注文。英語メニューでの名称は不明ですが、「Khoai tay chiến bơ tỏi & phô mai」とありました。ガーリックバター&チーズ風味のポテトチップス、といったところでしょうか。
何切れかいただいたのですが、手作業でスライスしたであろう荒いチップスであり、食べるたびに食感が変わって楽しかったです。ただ、噛みしめるたびに油がジュワッと口内に広がったので、食べ過ぎは厳禁かな…。

19時を回るとアコースティックライブが開始。それなりに音量が大きいのでお喋りは難しくなりますが、良い雰囲気と言えば良い雰囲気。

そして客席はいつの間にかほぼ満席に。手隙気味だった店員さんたちも慌ただしく動き回っています。なるほど、このスタッフの数は、満席になることを見越しての配置だったか…。
まとめ&「Trạm Hầm」の店舗情報

お会計はこちら。5人でCOMBOと数品、あとはお酒もちょっと注文して、総額2,097,900ドンでした。単純に割れば一人あたり約42万ドンということで、これはなかなかお安いのではないでしょうか。というか、ポテトチップス2皿も注文してたのか…。芋が好き過ぎる私たちです。
前述の通り、このエリアは中心部からのアクセスが良いです。レストラン自体も独特の雰囲気があり、勿論料理も美味しい。旅行者や来客のアテンドにも良いんじゃないかな、と思いました。正直なところ、私はアテンドに使えるようなお店の持ち弾が少ないので、ストックをどんどん増やしていきたい…。