ホーチミングルメベトナム料理

高級車が集うローカル食堂の謎*Quán Ăn Mê Kông@1区

伝統的なベトナム料理のひとつ、「コムタム (Cơm tấm) 」。「tấm」という単語は砕いた米粒を、「cơm」は炊いたご飯を意味する通り、砕けた米を炊いて作られる料理だ。

コムタムはベトナム南部―とりわけ、サイゴン(ホーチミン)で愛される定番料理であり、一般的にはグリルした豚肉 (sườn) や卵のミートローフ (chả) 、細切りした豚の皮 (bì) などを添え、ネギ油と甘辛の魚醤をかけて食べられることが多い。

こちらは肉団子のコムタム。1皿35000ドン。

もともとコムタムは労働者階級のための料理で、精米の際に残った粗悪な米粒から作られていた。しかし、それも時間の経過とともに進化し、今では朝食、昼食、夕食にと、幅広く楽しまれる食事となった。 ベトナム人の知恵と、食に対するクリエイティビティが反映された結果と言える。

そして、コムタムは今なお庶民の味方であり、価格はホーチミン中心部であっても1皿4万ドン程度、5万ドンとなると少し高い…というイメージ。

しかしながら、そのいかにも地域密着型のローカルな佇まいにも関わらず、昼食時に高級車が集まる謎のコムタム屋が1区の外れに存在する。

何がそこまで人を引き寄せるのか。依存性のある、何かやべーもんでも入ってるのか。どうしても気になってしまい、とうとう先日、足を踏み入れてしまいました。

ベンツが立ち寄るローカル食堂

やって来たのは1区のスングエットアン (Sương Nguyệt Anh) 通りにある「Quán Ăn Mê Kông」。3区にほど近い、1区の北西エリア。

お店の名前 Quán Ăn Mê Kông
住   所 136 Đ. Sương Nguyệt Anh, Phường Phạm Ngũ Lão, Quận 1, Thành phố Hồ Chí Minh
営 業 時 間 08:00~21:00

「と、いうわけで同僚のTさんの登場です。いやーお久しぶりです」「いや、久しぶりじゃないでしょ。毎日会ってるじゃない」「まあ、リアルではそうなんですけど、ブログ的には評判最悪の日系イタリアンに行ったとき以来なので。それよりわざわざ土曜にお付き合いいただきありがとうございます」「うん、実際気になってたからねー」

この日、店の前に停まっていたのはベンツのみだったが、別日にはフォードなど多種多様な外車を見かけたことがある。車には詳しくないが、フラグシップセダンのSクラスだろうか。何にせよ紛う事なく高級車である。なぜこんなローカル感全開の食堂前に路駐がされているのか…?

メニューは無し。試されている感MAX

入店。テーブルと椅子が雑然と並べられた、まあー、平均的(何なら平均以下)のローカル食堂。

「あれ、メニューは?」「ここメニュー無いみたいなんだよね。コムタム2つと…スープどうする?って聞かれてるからそれも」

そう、メニューは豚肉のコムタムと、はまぐりスープの2種類のみ。ローカル食堂でメニューを絞ることは珍しくないし、何なら特定の料理に特化している方が味・オペレーション共に信頼が置けるのだが、それにしても思い切ったな…

「Nishiさん、前にローカル食堂で当たったことあるよね?」「はい、揚げワンタンの付け合わせのスライスきゅうりで当たりました」「じゃあ、ここの野菜も食べないほうがいいかもね」「?」

そう言われ、厨房の方に目を向けると…

常温の中、皿に乗せられ積まれた付け合わせの野菜たちが。

「え、いくら何でもあれ使わないですよね?」「…上の皿取って、米盛り始めたけど」

「コムタム2丁お待ち」

「「…」」

実食。そして驚愕の会計

そんなわけでやって来たコムタムがこちら。何だかんだで豚肉はグリルしたてだし、米もターメリックライスで凝っているしで、付け合わせの野菜を除けば普通に美味しそう。

肉は、まあ…ちょっと硬かったけど、美味しい。コムタムに特にやべーもんは入っていないようである。と、なると…

 

このはまぐりスープが怪しいのではないか?

スープは陶器の器で運ばれてきた。何というか、盛り付けとかにはとことん無頓着そうなこの店に似つかわしくない、可愛くてお洒落でしっかりした器だ。

スープを掬い、恐る恐る口に運んでみる。

 

あっ、優しいお味…!

 

レモングラスの香りとはまぐりの出汁、そして仄かな塩味しか感じられない、とことん優しい味だった。脳汁がドバドバ出るようなジャンキーな食事とは、むしろ対局にあるくらいである。

 

お会計はこちら。読めねえ。

コムタム2皿で16万ドン、スープ2杯で8万ドンの模様。つまり…?

コムタム:8万ドン
はまぐりスープ:4万ドン

 

たっっっっっっっっっっ

か。

余りにも強気すぎる価格設定。ベトナム人の口コミでも「高い」というのは聞いていたので、ぼったくられたわけではないはず。

それでも尚、昼食時には多くの人が集まり座席が埋まっていることも、高級車で乗り付けているのをしばしば見ることも事実。だが、何となく美味しいだけのローカル食にこの金額を払うとは思えないし。それゆえに何かやべーもん入ってんじゃね?と疑ったのだが、結局真相はサイゴン川の奥底深くである。

あ、ちなみにお会計はTさんに出していただきました。ごちそうさまでした。

3回くらい食べると依存性が出てくるのかもしれない