カクテルと料理が溶け合うホーチミンの最先端ガストロノミー*Oculus Saigon@スアンホア街区

バー

急速な成熟を見せる、ベトナム・ホーチミン市の飲食シーン。とりわけクラフトカクテルとモダンガストロノミーの融合は目覚ましい進化を遂げています。単に酒を飲みながら料理をつまむだけではない、スピリッツの骨格や香りを料理と共鳴させるような試みが各地で生まれる中、ひときわ異彩を放つ一軒が2025年に登場。

本記事では、ホーチミン市旧3区に位置するバー「Oculus Saigon」をご紹介します。

※お店より招待いただき執筆したスポンサード記事です。ありがとうございました〜!

「Oculus Saigon」の場所・外観

やって来たのは、ホーチミン市旧3区(現スアンホア街区)・ヴォーヴァンタン (Võ Văn Tần) 通り

お店は大通り沿いではなく、ビルの脇に伸びる細い路地を入った奥深くに店舗を構えている…というのがミソ。入り口には大衆食堂などの看板が掲げられつつも、モダンなカンジのベジタリアンレストランの案内なんかもあり、何やら楽しそうな路地裏。こういうところにお洒落なお店があるから油断できない。

そんなホーチミンならではの情緒溢れる路地を抜けた先に現れるのが「Oculus Saigon」の重厚なファサード。こちら、建物自体は普通のオフィスビルっぽい感じなのですが…2階から上とのギャップすご。

アプローチはアンバーゴールドの照明で照らし出され、暗がりの中でひときわ存在感を放っています。頭上のキャノピーにはまるで往年のクラシックな劇場を思わせる無数のライトが連なり、階段の中央には、炎の揺らぎを思わせるオブジェがぼうっと浮かび上がります。非日常空間へと足を踏み入れる期待感を、この短いアプローチだけで見事に演出。

「Oculus Saigon」の内装・雰囲気

こちらの「Oculus Saigon」は、クラシックカクテルの再構築と本格的なファインダイニングの技法を融合させたメニューを提供するバー。2025年のオープンながら、富裕層向け高級メディア「Tatler Best」による「Tatler Best of Vietnam 2026」においてトップ100バーに名を連ねるなど、早くも熱視線を浴びています(記事)。

さて、店内へ足を踏み入れると、内装は照度を極限まで落とした黒とバーガンディを基調としており、空間全体を重厚なドレープカーテンが包み込んでいます。客席全体を照明は無く、テーブルの天板やアートワークだけにピンポイントで鋭いスポットライトが。余計な視覚情報は闇に溶け込み、目の前のグラスや料理だけに意識が研ぎ澄まれていくよう。

客席の主役となるのは弧を描くラウンドカウンター。腰壁には無数の細かな彫痕が刻まれており、ライティングにより彫りの深い陰影を見せます。店全体が一つの舞台のように機能する劇場型の設計ですね。

なお、このメインフロアとは別に、一晩につき1グループのみ、4名から6名限定で完全予約制のプライベートダイニングルームも併設。専属のフルテイスティングコースを提供する完全な隠れ家として設計されており、特別な集まりにふさわしい空間のようです。芸能人とかも来たりするのかしら。

「Oculus Saigon」のメニュー

Oculus Saigon」のメニューは、スピリッツの個性を探求するクラシックカクテルに、視覚の移ろいをテーマにしたテイスティングセットに分かれています。

クラシックカクテルは、カルヴァドス、アマーロ、リンドウの根といった薬草を用いるゲンチアナ・リキュールなど、主役となる酒の系統ごとに整理されています。ネグローニやブロンクスといった伝統的なカクテルのレシピを土台にしつつも、自家製のトリプルセックや檜ビターズ、柚子ビターズなどを合わせ、現代的な奥行きを持たせています。

食事と合わせるセットは、カクテル3種とフィンガーフード3種で構成される「ショートテイスティング」が各75万ドン、カクテル5種と料理5種による「フルペアリングセット」が各150万ドンで用意されています。メニューの横には目の動きを表すアイコンが添えられており、視線の変化とともに味わいの深層へ潜っていくストーリーが描かれています。

また、バックバーのハードリカーは30ミリリットルのシングルだけでなく、15ミリリットルのハーフショットから注文できるシステムになっており、少しずつ色んな銘柄を試したい人への配慮が行き届いています。

ペアリングコースの実食

さてさて、今回は料理とカクテルが互いを高め合う「フルペアリングセット」を体験。シェフのKhoa Nguyen氏は、シンガポールの「Odette」やストックホルムの「Frantzén」といったミシュラン三つ星店で研鑽を積んだ実力者とのこと。その緻密な料理とクリエイティブなカクテルがどんな呼応を見せてくれるのか!?

最初のペアリングは、「Flicker(瞬き)」と題されたカクテルと、「Imperial Caviar(キャビア、バーントクリーム、セルタス、エルダーフラワー)」。

運ばれてきたクープグラスの中には、りんごがまるで薔薇の花弁のように幾重にも重なっていました。そこにテーブルサイドで注ぎ入れられるのは、ノルマンディー地方のりんごの蒸留酒・カルヴァドスに、ガムシロップと生姜を合わせた甘めのカクテル。

合わせる料理は、氷の上に鎮座する円柱状のセルタス。セロリとレタスを合体させたような中国原産の野菜で、所謂「茎レタス」ですね。

噛み締めるとシャキッと小気味よい音が響き、中から焦がしを入れた濃厚なクリームとキャビアの塩気が弾ける!そこにカクテルを流し込むと、生姜のキレとカルヴァドスの酸味がクリームの油分を軽やかに洗い流してくれます。

続いて登場したのは、「Side Glance(横目)」と題されたカクテルに、「Chutoro(中トロ、ポテトレース、タラモサラタ、ディルフラワー)」および「Hokkaido Scallop(北海道産ホタテ、ビールクルスタード、ジャスミンティージュレ、梨、フィンガーライム、デイジーフラワー)」を合わせた一連。

中央に据えられたのは、生のオレンジを丸ごとくり抜いた器。テーブルサイドで直接注がれるカクテルは、日本酒をベースにオレンジ果汁、ソーダ、カモミール風味のコアントロー、そしてロゼワインを合わせた予想もつかない一杯。

フィンガーフードの一方は、極細のポテトレースの上にタラモサラタ(魚卵のクリーム)と中トロを重ねた贅沢な一品。もう一方は円錐形の陶器に立つ繊細なタルト仕立てです。サクサクの生地を噛むとホタテの甘みとフィンガーライムの粒がプチッと弾け、オレンジの器からカクテルを含めば日本酒由来のアミノ酸が魚介の旨味と寄り添い、柑橘の酸が後味を引き締めるのでした。

なお、陶器の窪みには乾燥コーンが。薄い生地が湿気るのを防ぎつつ、垂直に立たせる工夫なのかしら。

中盤のペアリングは、「Steady Look(凝視の眼差し)」と、「Churros(チュロス、リプタウア、チョリソー)」および「Truffle(トリュフ、エメンタールチーズ、パートブリック)」。

平盃の中央に小枝が配され、器からスモークが静かに溢れ出します。徳利から注がれたのは、ココナッツオイルで滑らかな質感をまとわせたラムに、カシューナッツやレーズンハニーを合わせたカクテル。

合わせるスナックは、丸太から生えるキノコのように直立したチュロスと、瓦の台座に置かれた葉巻仕立てのスティック。

ザクッとしたチュロスからは、パプリカ風味のリプタウアチーズとチョリソーの辛味が広がり、極薄の生地で巻かれた葉巻からはトリュフの芳香が顔を出します。なお、葉巻の生地については「Brick Pastry(ブリック・ペストリー、小麦粉で出来た極薄生地)」とメニューにあったのですが、スタッフによると「ライスペーパー」であるとのこと。この塩気とスパイスに対して、ナッツと蜂蜜をまとったラムの甘美なコクが相性の良さを見せてくれました。

この直後に供された「Waffle & Butter(ワッフルとブラウンバター)」は、甘さを完全に排した塩気のある焼き立て生地。

ベトナム発のテーブルウェアブランド「Amai」の器に美しく盛られた冷たいブラウンバター。こちらを熱々のワッフルに溶かして頬張ると、ラムの余韻と重なり思わず息をのむ美味しさ。

メインディッシュの場面では、否が応でもカウンターへと視線が誘導されました。まずは「The Stare(見つめる眼)」の登場。

バーテンダーが柄杓ですくい上げた度数72度のタトラティーとアブサンに火を放ち、暗がりの中に青い炎が立ち上ります。青い炎の筋が酒器へと落ちていく「ブルー・ブレイザー」の技法でフランベされ、アルコールを丸めながら、なんとそこに椎茸と昆布の出汁を合わせたという温かいスープカクテルが徳利で提供されます。

メインは「Stuffed Chicken Wing(手羽先のロースト、椎茸のピューレ、ホワイトアスパラガス、ハラペーニョと獅子唐のソース、木の芽、ナスタチウム)」。骨を抜いて具材をぎっしり詰め、皮目をパリッと焼き上げています。椎茸ピューレの深いコクとハラペーニョの爽やかな辛味が重なり、温かい出汁カクテルを盃で口に含めば鶏の肉汁と昆布の旨味が混ざり合って極上のスープへ。

コースの締めくくりは、「The Close(まぶたを閉じる)」と題されたカクテルと、温かい「Prawn bisque(海老のビスク)」の組み合わせ。

スタッフからは、まずカクテルを一口飲んでから温かいビスクを口に含むようにと案内されました。カクテルはコニャックに滑らかなとうもろこしのムースを浮かべたもので、甘美な香りが舌を包みます。そこに海老のビスクが流れ込むと、冷と温、ムースとスープが溶け合い、海老の凝縮した旨味ととうもろこしの甘みが重なって、びっくりするくらい濃厚なポタージュに。口内調合の妙である。

デザートには、「Panna Cotta(バニラパンナコッタ、トンカ豆、ダラット産ストロベリーコンソメ)」が間を空けて運ばれてきました。

まるで花弁のような陰影を持つ器に盛られたパンナコッタは極限まで柔らかく、ダラット産の良質な苺から抽出したスープの酸味、そして削られたトンカ豆の甘くスパイシーな香りが、贅沢な時間の幕引きを何とも優美に飾ってくれたのだった。

「Oculus Saigon」の店舗情報

Oculus Saigon」をご紹介しました。

路地裏の導入から店内の照明設計、手元で繰り広げられる演出、素材同士のペアリングに至るまで、すべての瞬間に明確な意図が込められています。「次は何が起こるんだろう!?」というワクワク感に満ちたお店でございました。

バーという空間でありながら、世界のトップレストランに匹敵するガストロノミーの探求を体験できる場所は、現在のホーチミン市にあっても極めて希少。五感を澄ませたい、大切な誰かと特別なひとときを過ごしたい、そんなときに是非足を運んでほしいお店です。

お店の名前 Oculus Saigon
住   所 54 Võ Văn Tần, Xuân Hòa, HCMC
営 業 時 間 19:00~25:00(火~木)、19:00~26:00(金~日)
定 休 日 月曜日
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