経済成長著しいベトナム。景気は減速傾向にあるとも言われつつも、中間層の拡大に伴い「お金を出してでも本物志向のものを楽しみたい」という人が増えてきたように思います。
今回ご紹介するカフェも、マーケティング的な言い回しをすると「ハイプレミアム価格帯」に属するであろうお店。しかし、オープン間もない早朝からほぼ満席であるなど、大人気の様子。
本記事では、ホーチミン市1区の路地裏に位置するカフェ「ten.coffee(てんてんコーヒー)」をご紹介します。
「ten.coffee」の場所・雰囲気

やって来たのは、ホーチミン市1区・ニエウロック=ティゲー運河沿いの、ホアンサ (Hoàng Sa) 通り。タンディン市場やタンディン教会が位置するエリアであり、1区とフーニャン区とを結ぶ、キエウ橋 (Cầu Kiệu) のすぐ近くです。

「ten.coffee」へはこちらの路地に入ります。ホーチミン市中心部の喧騒を忘れさせる静かな雰囲気の中、眼前に見える緑のアーチをくぐると…。

「ten.coffee」に到着。スリットの入った木目の引き戸や、瓦のようなデザインの庇など、日本家屋を思わせる外観が特徴です。
このとき朝の8時半なのですが…ほぼ満席。あまりあちこち写真を撮れる雰囲気では無かったので写真が少なめですが、ご容赦くだせえ。

こちらの「ten.coffee」、オーナーは日本人女性。ただ、日本人コミュニティに向けた宣伝は大々的にはされていないようで、ほとんどはベトナム人のお客さん。私自身、こちらのお店を知ったのは、ホーチミン市内のカフェを紹介するインスタアカウント(ベトナム語)の投稿からでした。
店名の「ten.coffee」は「てんてんコーヒー」と読み、点と点を繋ぐように、コーヒーを通じて人と人との繋がりを作るようなあたたかい空間の提供を目指したい、という思いを込めて名付けられたそうです。

座席はテラス席中心。午前中であれば、頭上に緑の屋根があることもあって案外涼しいです。

お店のWi-Fiパスワードは「yohakunobi」。
「余白の美」―デザインや芸術にあえて間をつくることを美しいとする日本独自の美意識。お店の華美すぎない装飾もその思想に基づいてのことでしょう。レシートに書かれたパスワードを指でなぞり、思わず反芻します。余白の美、よはくのび、ヨハクノビ。
「ten.coffee」のメニュー

「ten.coffee」のメニューはこちら。お店としては、世界各地の豆を使用するハンドドリップコーヒー、およびイタリア製(ラ・マルゾッコ社製)の高級エスプレッソマシンを使ったエスプレッソを推しているようです。ベトナムコーヒーにはダラット産ロブスタ、イタリアンコーヒーにはエチオピア産グジシャキソを使用。

と、ここまで書いておいて何なのですが、私はコーヒーが苦手なのです。飲めなくは無いのですが、あまりまともな食レポは出来ません。ということで、「Matcha Latte」を注文しました。価格は130,000ドン。
ラテのミルクは、牛乳およびオーツミルクから選択可能。また、甘さも指定できます。今回は、牛乳・無糖でお願いしました。

なお、ストローの提供はありません。これは、0.8-1.0mmという繊細な飲み口の極薄グラスがこのお店の売りだから。これにより、飲み物のアロマ(香り)と味をダイレクトに感じられると言います。確かに、唇に当たる部分が薄いので口当たりが良く、グラスの存在を感じさせません。この感覚が体験として面白かったです。
肝心の味ですが、味が濃くえぐみの少ない抹茶が使用されており、無糖だからこそ美味しくいただけました。よくある「抹茶風味」とは比較にならないほどの深みがあります。


お店にはファンサ精神旺盛な看板猫ちゃんがおり、あちこちで愛想を振りまいていました。私の所には小バエしか寄ってきませんでしたが(※外なのと、緑が多いので虫は普通にいます)

その後、9時半くらいには完全に満席となりました。価格帯としては決して安くないと思いますが、余裕があるであろうイケてるサイゴンっ子たちが次々に来店していた印象です。
なお、お店のルールとして、混雑時の滞在は2時間まで(追加でドリンクを注文すればさらに滞在可能)。また、ドリンクを注文しない場合のチャージ料や、飲食物の持ち込みについてもルールが明記されているなど、この辺りは日本人経営ならではの細やかさですね。