お酒を飲みながら食事ができる韓国の屋台「ポジャンマチャ(포장마차)」。ポジャンマチャを略した「ポチャ」という言葉もあり、主に「飲み屋屋台」という意味で使われています。
ポチャには簡易的な丸テーブルとプラスチックの椅子が置かれ、冬には寒さをしのぐためのビニールテントで覆われるのが特徴。2軒目、3軒目とはしご酒をして、最後に深夜立ち寄る場所として愛されています。
最近の韓国では、天候を気にせず、より快適に屋台の雰囲気を楽しめる「室内ポチャ」という業態が人気。そして今回紹介するお店も、まさにこの「室内ポチャ」の魅力をホーチミン市で再現したレストランなのです。
本記事では、ホーチミン市直轄トゥードゥック市(旧ホーチミン市2区)の韓国料理レストラン「쎄쎄쎄포차 PUB CCC(シーシーシー・ポチャ)」をご紹介します。
「쎄쎄쎄포차 PUB CCC」の場所

やって来ました、ホーチミンメトロ1号線・タオディエン駅。

この辺りの「タオディエン(Thảo Điền)」エリアはホーチミン市内の外国人駐在員ハブとして知られ、多くのヴィラや高級マンションが立ち並ぶ富裕層エリアのひとつ。多くの外国人が暮らしており、多文化コミュニティが形成されています。
そしてそれは韓国人コミュニティについても同様。これまでは韓国人街と言えばホーチミン市7区を指すことが多かったのですが、さらなる利便性を求め、タオディエンエリアに移り住む人が増えているようです。ということで、この辺りは韓国系のオシャレなお店が急増中。

タオディエンのメイン通りの一つ、クオックフオン (Quốc Hương) 通りからヘム(路地)へと入った、少し奥まった場所に「쎄쎄쎄포차 PUB CCC」はあります。先ほどまでの賑やかさから一転、ローカルな雰囲気が漂う静かなヘムを進んでいくと、そのお店は突如として現れます。

…えーと、ここで合ってます?

真っ暗な扉に阻まれ、店内の様子が一切伺えない…!この店、本当に入って良いのだろうか?
「쎄쎄쎄포차 PUB CCC」の雰囲気

強い意志を持って黒い鉄製の扉を潜り、店内に足を踏み入れると…おお、店内に広がっているのは先述の韓国屋台「ポジャンマチャ」の空間が。

目を引くのが、フロアに大胆に設営された真っ赤なテント。ビニールシートで覆われたテントの中が客席になっており、まさに韓国ドラマにありそうな光景。
テーブルは、ピカピカのステンレス製丸テーブル。そして椅子は、赤いプラスチック製の低い椅子。この少しチープな組み合わせが、逆に本物感を演出し、気取らない飲み屋のムードを高めてくれます。ホーチミン市にいることを忘れてしまうほどの没入感。

丸テーブル1台につき最大で4人が席につけるそうですが、4人だとちょっと狭そうだな…。
今回は6人で訪れたのですが、韓国出身の同僚Jさんが事前にお店を予約してくれていました。予約時に「6人だからテーブル2つにしてよ」と伝えたところ、当初は「金曜の夜なので…」と渋られてしまったそう。ゴネる…もとい、粘り強くリクエストしたところ、最終的には韓国人オーナーが電話口に出てくれ、快諾してくれたそうですよ。つよい。いやー、実際、このテーブル1台に6人は無理でしょう。
「쎄쎄쎄포차 PUB CCC」のメニュー


「쎄쎄쎄포차 PUB CCC」のメニューはこちら。これは韓国語メニュー。




勿論、英語メニュー・ベトナム語メニューもあります。酒が進む屋台の定番おつまみから、テーブルの主役になる本格的な鍋料理、〆にぴったりのご飯ものまで、幅広いラインナップがずらり。
トッポギやオデンタン(韓国おでん)、ケランマリ(韓国風卵焼き)といった、定番屋台メニューはもちろんのこと、韓国の若者の間で流行しているようなトレンドメニューも楽しめます。


ドリンクも、チャミスルやジンロといった各種ソジュ、生マッコリはもちろん、フルーツフレーバーのソジュや、ファヨ(火堯)のような高級な韓国焼酎、さらには各国のビールまで揃っており、お酒好きも満足することでしょう。ソフトドリンクの種類は少なめですが、まあ飲み屋ですからね。

同僚Jさんの目を引いたのが、こちらの「キムピタン (Kimpitang)」。Jさんも聞いたことがないメニューらしく、韓国語を解すベトナム人店員ヒョンニムにあれこれと質問。Jさんの勢いに店員さんもたじたじ。ちなみにお兄さんの韓国語はかなり上手だったそうで、「最初、韓国人だと思った」とのこと。
韓国屋台グルメたちを実食
それでは、我々が実際に注文した、怒涛の10品をご紹介。
유린기 (Yurinki / 油淋鶏)

195,000ドン。カラッと揚がった鶏肉に、醤油ベースの甘酸っぱいタレがジュワっと染み込んだ、韓国スタイルの油淋鶏。その上には、惜しげもなく散りばめられた赤と緑の刻み生唐辛子が。

口に入れると、まずタレの甘酸っぱさが広がり、直後に唐辛子のフレッシュな辛さが駆け抜けていきます。もっと強烈な辛さをイメージしていましたが、意外にも「ほどほどに辛い」程度であり、後味はすっきり爽やか。キリッと冷えたソジュやラガービールが合うことでしょう。ただし青唐辛子の種はフツーに辛いので、迂闊に口に含まないように。
슈프림치킨 (Supreme Chicken / シュプリームチキン)

185,000ドン。韓国チキンの定番、ヤンニョムチキンが華麗にドレスアップ。甘辛いヤンニョムソースの上に、ヨーグルトのような爽やかな酸味を持つ白いクリームソースがかけられています。

Wソースがカリカリの衣をまとったジューシーな鶏肉に絡んで、こってり感と爽やかさが同居する不思議な美味しさに。
김피탕 (Kimpitang / キムチピザタンスユク)

235,000ドン。同僚Jさんも知らなかったこちらのメニュー。「キムピタン」は「キムチ・ピザ・タンスユク(=韓国風酢豚)」の略であり、甘酢あんが絡んだ豚の唐揚げの上に、炒めたキムチとたっぷりのチーズを乗せて焼き上げた、背徳のジャンクフード。

甘酸っぱさ、ピリ辛な酸味、とろーりチーズの塩気とコク、豚肉の旨味。全てが口の中で一体となった時の多幸感はなんとも筆舌に尽くしがたい。ベースとなる酢豚はシナモンが効いており、変化球な組み合わせながらも、甘くエキゾチックな香りが意外にも合っている。
튀김범벅 (Bumbuk / 天ぷら盛り合わせ)

75,000ドン。甘辛いソースで和えられた揚げ物の盛り合わせ。中身は、韓国春雨が詰まった海苔巻き(キムマリ)や揚げ餃子(マンドゥ)、そして棒状のお餅(トック)など。それぞれ異なる食感と味わいの具材が、一つのソースでまとめられています。

これぞB級グルメという一品。ちなみにソースは結構辛めです。
콘립 (Corn Ribs / コーンリブ)

85,000ドン。リブのように縦にカットされた、ユニークな見た目の焼きとうもろこし。日本のとうもろこしに近い品種であり、一粒一粒がプチっと弾ける食感と甘みを楽しめます。

塩がかかっているのでそのまま食べても美味しいですが、添えられたソースにディップすると洋風な味わいに。箸休めにも最適な、大人も子供も楽しめるメニューです。
오뎅탕 (Oden soup / 韓国おでん)

185,000ドン。カセットコンロの上で、金色の鍋がぐつぐつと音を立てる。この鍋があるだけで韓国屋台感が増しますね。

その湯気の向こうには…優雅に揺れる、串に刺さったおでん(オムク)たち。スープは辛いスープに変更することも可能です。

貝出汁の旨味を感じられる、五臓六腑に染み渡るような滋味深いスープ。そのスープをオムクがたっぷりと吸い込み、噛むほどにじゅわっと溢れ出すシアワセ。味の濃い料理が多い中、その合間にぴったりの優しいお味です。
닭똥집 (Daktongzip / 砂肝炒め)

225,000ドン。熱々に熱せられた鉄板の上で、ジュージューと音を立てながら運ばれてくる砂肝炒め。丸ごと入ったニンニクのインパクトも抜群。

砂肝は、期待を裏切らないコリッコリの力強い歯ごたえ。そこに、甘辛いタレとごま油の香ばしさが絡みます。
계란말이 (Egg roll / 韓国風卵焼き)

ずっしりと密度が高く、食べ応えのある韓国の卵焼き。多くの西日本出身者にとってはしっくりと来そうな、しょっぱいタイプの卵焼きです。
ケチャップとマヨネーズが網目状にかけられ、どこか懐かしいビジュアルと味わい。辛い料理が続いた時のオアシスになってくれそうな一品。
돌솥치즈밥 (Cheese rice / 石焼チーズご飯)

135,000ドン。熱々の土鍋(トゥッペギ)の底にご飯を敷き、コチュジャンベースのタレ、キムチ、そしてたっぷりのチーズとコーンを乗せた状態で提供される、石焼混ぜご飯。

これを熱いうちにスプーンで豪快に混ぜ合わせます。チーズの「伸び」がすごい。
チーズがとろけて全体をまとめ上げ、甘み、辛み、酸味、塩気が渾然一体となった、脳天にガツンとクる濃厚な味わいが完成。石鍋の底にできる「おこげ」もまた醍醐味。
설탕토스트 (Sugar Toast / シュガートースト)

175,000ドン。食事の最後はやはりデザート。たっぷりの砂糖がキラキラと輝く、韓国風フレンチトースト。添えられているのは、いちごジャム、チーズ、そしてなぜかキャベツサラダ。

ジャムをつけてデザートとして味わうのはもちろん、チーズを乗せて食べる「甘じょっぱい」組み合わせもあります。…が、砂糖とジャムが強すぎてチーズの塩気が隠れ気味。とは言え、美味しくないわけがない組み合わせです。
「쎄쎄쎄포차 PUB CCC」の店舗情報

お会計は、180万ドン。6人で訪れたので、1人あたり30万ドンです。安い!
ただ、上記のレシートを見てもらえれば分かるのですが、我々、ソフトドリンクしか注文していません。飲み屋だというのにストイックすぎる。もしお酒を飲むのであれば、1人あたり40〜50万ドンくらいになるかな?
冒頭に書いた通り、「ポチャ」は2軒目・3軒目に訪れる場所…ということで、20時を回ったタイミングくらいで店内が少しずつ混み始めました。
しかし、2軒目以降にこの店を訪れてしまったら、韓国グルメの数々を味わうことが出来ないじゃないか(満腹だから)!私としては、あえての1軒目ポチャを推奨したいところです。