美食の街、ホーチミン市。日々進化を遂げるグルメシーンには圧倒されるばかりであり、伝統的な味わいからイマドキのフュージョン料理まで、さまざまな選択肢が我々を迎えてくれます。中でも最近見かけるのが、アジアンテイストを洋食に融合させるユニークなアプローチを試みるレストラン。
今回は、中心部にほど近いながらも、喧騒から少し離れた場所にひっそり佇むイタリアンレストランを訪れました。スタイリッシュな空間と、枠にとらわれない発想から生まれる料理の数々は、日常のディナーをちょっぴり特別な体験へと変えてくれる…ハズ。
本記事では、ホーチミン市旧3区(現スアンホア街区)の「nonê pasta」をご紹介します。
「nonê pasta」の場所・雰囲気

ということでやって来ました、タンディン市場からほど近い、フインティンクア (Huỳnh Tịnh Của) 通りとグエンヴァンマイ (Nguyễn Văn Mai) 通りの交差点。中心部から近い立地でありながらも、大通りからは中に入った場所にあるためどこか隠れ家のような落ち着いた雰囲気が漂うのが特徴。


一方、周囲にはおしゃいオープンカフェやショップ、ブティックホテルなんかも。外国人も多く、実は今アツいエリアなのかも。

で、そんな中にあるのが「nonê pasta」。1階部分は深みのある赤で塗られた外壁、上層階はコンクリートの質感に整然とはめ込まれたガラスブロックと、個性的なファサードがなんとも目を引きます。

店頭で予約名を告げ、案内されるままに階段を上がると…そこは光と影のヴィンテージモダン空間なのであった。

客席の照度はかなり低めになっており、ゲストのプライベート感を高める暗がりが空間のベース。一方、各テーブルの天面にはスポットライトが落とされ、この光が卓上をなんともドラマチックに照らし出してくれます。運ばれてくる料理を主役として引き立てるとともに、自然と視線をテーブル上へ誘導する視覚効果もあるとかないとか(適当)。
店内の壁面には経年変化を感じさせる塗り壁の隙間からラフなレンガの地肌が露出したデザインで、絶妙なヴィンテージ感。これらとさまざまな素材のインテリアを組み合わせることでイマドキなインダストリアルスタイルに昇華。

こちらはバーカウンター。入店時は夜6時でしたがまだ完全に日は沈んでいなかったので、わずかに自然光が入ります。ガラスブロックの後ろから光が当たることでボトル群がシルエットとして浮かび上がっていますね。

客席以外は外観から続く赤が大胆に取り上げられています。黒やダークブラウンと調和させることで、オトナ向けのエレガントな雰囲気が出来上がっているカンジ。

気になったのは、私が座った革張り調の椅子がバリバリに剥がれてたことかな。暗いから目立ちにくいけど、座ってて違和感あったかも。
「nonê pasta」のメニュー


「nonê pasta」のメニューはこちら(Webで公開されているものを引用しました)。構成としては、大きく分けてクラシック、シグネチャー、前菜やメイン、ドリンク類から成ります。スパイシーマークとベジタリアンマークの表記あり(シーフードはベジタリアンメニュー扱いらしい)。
ハイライトとしては、イタリアンにアジアンテイストを大胆に取り入れた創作パスタたち。日本風の「Mì Ghẹ Sốt Chanh Yuzu Miso(渡り蟹の柚子味噌パスタ)」、タイ風の「Mì Ý Hải Sản Sốt Tom Yum(シーフードトムヤムパスタ)」などなど、アジア各国から参戦。もちろん王道のイタリアンもラインナップされています。「Mì Ý Carbonara(カルボナーラ)」はパンチェッタでなくベーコン使用。


ドリンク類については、チリやイタリア、フランス産の赤白ワインがグラスやボトルで用意されているほか、南国らしいフルーツにハーブやスパイスを組み合わせた独自のモクテルが一律70,000ドンで提供。というかノンアルコールドリンク安いな!カフェ並みの価格じゃないか。
なお、注文時にはアレルギーの有無を確認してくれました。
実食

何はともあれ乾杯。同行者はハウスワインの白「Concha Y Toro, Frontera, Sauvignon Blanc」150,000ドンを、私はモクテルの「Dưa Dả(ズア・ザー)」70,000ドンを注文。後述の通り、シーフード系中心の注文だったので、白のチョイスと相成りました。

大輪の花のようなドライパイナップルが飾られた、華やか~なビジュアルが印象的なモクテル。パイナップル+メロン+エルダーフラワーの香りという組み合わせであり、ノンアルコールドリンクでありながら、なんとも複層的で満足感のある一杯でした。

前菜。「Salad Cá Hồi Ủ Muối Sốt Cam Vàng Thì Là(熟成サーモンのサラダ オレンジディルドレッシング)」235,000ドン。メニューの英語表記に「Gravlax(グラブラックス)」とあり、何ぞや?と思ったのですが、生のサーモンに塩や砂糖、ディルなどのハーブをまぶして脱水し、時間をかけて熟成させる北欧伝統の調理法らしい。もともとは砂に埋めてたそうなのですが、さすがに今は冷蔵庫の中で熟成させてるとのこと(当たり前)。
大輪のバラの花のように盛り付けられた熟成サーモン。程よい塩気があり、瑞々しい葉物野菜たちと相性グンバツ。あと、サーモンの下にわさびクリームチーズが敷かれており、これもまた濃厚(でもわさびでさっぱり)で美味い。

周囲に散りばめられた鮮やかなオレンジ色のつぶつぶ。サーモンのサラダだし、イクラかな?と思ったのですが…柑橘系を思わせる甘い味のゼリーでした。どういう狙いなのかな?まあ、オレンジ系のドレッシングと喧嘩することはないし、「なにこれ?」と考えながら口に含むのも面白い体験でした。

「Mì Linguine Tôm Sốt Gochujang Rose(コチュジャンロゼソースのエビリングイネパスタ)」215,000ドン。お皿が運ばれてきた瞬間から、香ばしくグリルされた海老の香りが強烈に漂う!欲を言えば、サラダみたいに取り分けるトングを付けてくれると嬉しかった。

韓国のコチュジャンとイタリアンのロゼソースを融合させたソースは結構スパイシーで刺激的。クリーミーでマイルドな口当たりの奥から、コチュジャン特有のピリッとした辛みがすぐに追いかけてきます。平打ちのリングイネはアルデンテ仕上げで、甲殻類の旨みを含んだソースも相まって日本人が気に入りそうな一品。海老もプリッップリで神ですよ。

「Ravioli Nhân Tôm Sú Sốt Tôm Hầm Chậm(ブラックタイガーのラビオリ 濃厚ビスクソース)」185,000ドン。海老が被ってしまった。

深みのあるオレンジ色のビスクソースに、もちもちとした質感のラビオリ。上にはチーズとハーブがあしらわれています。ビスクソースは海老の旨味がこれ以上ないほどに凝縮。大口を開けてラビオリに嚙みつくと、ソースのコクと一体になって何とも言えぬ至福の余韻…。先ほどのリングイネパスタとは異なる海老の魅力があるのだった。

ビュッフェの盛り付けが下手な人の皿みたいになっちゃった

メインディッシュ「Cá Chẽm Đút Lò Sốt Miso Dừa(スズキのオーブン焼き ココナッツ味噌ソース)」275,000ドン。皿の上には、皮目をパリッと香ばしく焼き上げたスズキが鎮座!立体的な盛り付けもあり、芸術的なビジュアルに目を奪われる。

同行者にざっくざっくとナイフを入れてもらいました。身はふっくらと柔らかくジューシー!下に敷かれた淡い黄色のソースは「ココナッツ味噌ソース」なる和と南国が融合した独創的なもの。どちらかというと味噌の味が強めで、ココナッツは「向こうにいるかな…?」くらいの存在感なので、奇を衒ったものでもなく、ちゃんとバランスは取られてます。また、一緒にジェノベーゼソースもまぶされているのですが、これを味噌ソースと合わせて食べると美味すぎてびっくりした。
淡白でスズキの身にこれらの濃厚なソースを絡めて食べれば、素材のうまあじが何倍にも膨らんで素晴らしいご馳走へと昇華。添えられてたトマトも1個1個丁寧にグリルされていて美味。

デザートもいっちゃうわよ。ティラミスとも迷いましたが、「Crème Brûlée(クレームブリュレ)」85,000ドンを注文。真っ白な陶器の器の中で、滑らかかつ均一に焼き上げられた琥珀色のカラメルが輝いています。ふ、ふつくしい…。

硬くキャラメリゼされたカラメルの殻。結構勢いをつけて割ると、その下からバニラが豊かに香る、シルキーなクリームが顔を出しました。このクリームがまた濃厚かつ、しっかり卵の味がする(でも臭みとかはない)良質なクリームでして。このクオリティのクラシックデザートがこのお手頃価格で楽しめるのはうれしい。
「nonê pasta」の店舗情報
「nonê pasta」をご紹介しました。ドラマチックな空間デザインと、アジアの感性を注ぎ込んだイタリアンが特徴のレストラン。コチュジャンや柚子味噌、ココナッツといった、一見奇抜な組み合わせを違和感なくパスタやメインへと昇華させるセンスは見事。
少し特別な気分を味わいたい夜に足を運んでみてはいかがでしょう。なお、我々が訪れた際は結構座席が埋まっていたので、来店時は念のため事前の予約をお勧めします(InstagramのDM等で可能)。

