めまぐるしく変化するホーチミン市。
おしゃれなカフェや多国籍なレストランが次々とオープンするこの街で、ふと「ベトナムの家庭的なごはんが食べたいなー」と思うことがありませんか?ありますよね!?(強制)
今回は、まるでセンスの良い友人の家のような落ち着きの空間でベトナム家庭料理が楽しめる、ホーチミン市3区のレストラン「nhà anh」をご紹介。
「nhà anh」の場所・外観

オフィスビルが立ち並び、昼夜を問わずバイクと車が行き交うPasteur (パスツール) 通り(ベトナム語では「パスター」と発音)。その喧騒を横目に、一本の細いヘム(路地裏)に足を踏み入れると、空気がふっと変わるのを感じます。
こちらのヘム、以前ご紹介した抹茶カフェ「Midori」をはじめとして、良き雰囲気のカフェやお店が立ち並んでいます。日を改めて再度散策したいと思ってたんですよね。

使い込まれた古材を丁寧に組み合わせたような、温かみのある木製のファサード。その壁をキャンバスにして青々としたツタや観葉植物が茂っています。一見何のお店か分からないこちらの建物が、今回紹介するレストラン「nhà anh」。

レトロな雰囲気の中に鮮やかに映える、モダンなオレンジ色の看板。「nhà anh」は「彼の家」の意、ですかね。「Anhさんの家」とも迷ったのですが、それなら大文字で表記するだろうし。
「nhà anh」の内装・雰囲気

木の扉をそっと開けると、すぐに上階へと続く階段が現れます。赤・青・白のトリコロールカラーに塗られた手すりは、まるで古い床屋のサインポールのような、遊び心ある装飾。個性的なアプローチが期待感を高めてくれます。

階段を上りきった先に広がっていたのは、木の温もりに満ちた、家庭的なダイニング空間。フロアの床は温かみのあるウッドと、清潔感のある白いヘキサゴンタイルが巧みに使い分けられ、空間にリズムを生み出していますね。

堂々と鎮座する大きなダイニングテーブルには、エメラルドグリーンの川が流れているかのようなレジンアートが。

窓際の席は、緑の大理石風の丸テーブルに、モダンなデザインの椅子が置かれ、カフェのような雰囲気。窓からは柔らかな自然光が差し込み、手書き風のアートが描かれた窓ガラスを通して、外の緑が優しく揺れているのが見えます。
「nhà anh」のメニュー




「nhà anh」のメニューはこちら。ベトナムの家庭料理と言えるラインナップが揃っています。独立したベジタリアンメニューが用意されていることも、ベトナムの食文化の多様性を示すという点で特筆すべき内容。
メニューはベトナム語と英語が併記されており、価格も小(small/nhỏ)と大(large/lớn)で選べるものが多く、少人数でもグループでも利用しやすい構成になっています。ただ、基本的には大皿料理なので、一人だとあまり色々は食べられないかなあ。
あ、ちなみに水は無料でいただけます。
心温まる家庭料理を実食

「Hến xúc bánh tráng (nhỏ)」75,000ドン。しじみの炒めものと揚げせんべいです。定番のおつまみ。

しじみの凝縮された旨味、香ばしくローストされたピーナッツ、独特ながら爽やかな香りの香草、そして甘みを引き出すフライドオニオン。これをせんべいに乗せていただくと、カリッとした食感の後に、豊かな風味が口いっぱいに広がりたまらない。

「Ức gà chiên xóc muối tôm」95,000ドン。鶏むね肉のクリスピー揚げに、海老塩をたっぷりまぶしたもの。

「Cơm (thố nhỏ)」20,000ドン。白米ではなく玄米(ブラウンライス)です。

チキンの衣は軽く、クリスピーな食感。その中には、パサつきがちな鶏むね肉が驚くほどしっとりと、ジューシーさを保っていました!海老塩も良い仕事をしておりまして、海老の旨味、唐辛子のピリッとした辛味、そしてガーリックの香ばしさでご飯が進みます。

プチプチとした噛みごたえのある玄米。今回、2人で訪れたので、「さすがにこの量の米は少なすぎ…?」と思ったものの、何やかんやでかなり腹に溜まりました。結果的にちょうど良い量であった。

ベトナムの家庭では、ご飯、おかず、そしてスープ(Canh)が揃って一つの献立。と、いうことで「Canh nấm bào ngư Organic rong biển thịt bằm」75,000ドン。アワビ茸とわかめ、豚ひき肉のスープです。

わかめと豆腐のせいか、味噌汁みのあるビジュアル。実際は町中華で出てきそうな、ごま油の効いたわかめスープと言った感じの味わい。「もうちょっと塩が効いてても良いかな?」と思うくらいには優しいお味です。
ちなみにアワビ茸とはエリンギに似たキノコ。コリコリとした食感が楽しいですよ。

デザート。「Kem chuối」10,000ドン。「バナナアイスあるやん!」と注文したところ…予想もしなかったビジュアル。

どうやらこれは、足が速く長期間保管できないバナナを保存、または売り物として売るための知恵だそう。スライスしたバナナとココナッツミルクとで作る、昔ながらのオヤツです。
…あれ?でもベトナムで冷凍庫が普及したのって、かなり最近の話なのでは。
実際、同行者の友人曰く、このスタイルのバナナアイスが生まれたのは、冷凍・冷蔵庫が普及し始めた20年ほど前とのこと。それまで友人の故郷であるフーイェン省の田舎町には、冷蔵庫のある家は1軒だけしか無かったそうな。

そんな素朴なバナナアイス。熟したバナナのねっとりとした自然な甘みと、ココナッツミルクの濃厚でクリーミーな風味が口の中で溶け合います。派手さはないけれど、心に沁みる美味しさ。砕いたナッツの香ばしさも良いアクセント。
まとめ&「nhà anh」の店舗情報

ホーチミン市3区のベトナム料理レストラン「nhà anh」をご紹介しました。
お洒落なんだけど、華美すぎず肩肘張らない感じで、どこか懐かしくて温かい。家庭的だけど、センスも感じられる。いろんなシチュエーションで利用できそうなお店だと思いました。
ちなみにお会計は2人で285,000ドン。我々がさほど量を食べなかったというのもありますが、それを差し引いてもリーズナブルな価格もまた魅力的ですね。