ホーチミン市内に2店舗を展開しているカフェ「Make Room Café（以下、Make Room）」。
洗練されたミッドセンチュリー調の内装が若者からの支持を集めるこちらのカフェですが、このたび3店舗目をオープン。ちょっぴりディープですが、一味違う観光地を探している人にはぴったりのロケーションです。
本記事では、「Make Room」の新店「Make Room – Tôn Thất Đạm」をご紹介します。
「Make Room – Tôn Thất Đạm」の場所
やって来たのは、サイゴン街区（旧1区）・トンタットダム (Tôn Thất Đạm) 通り。証券会社や銀行の本店が立ち並ぶ、まさに「サイゴンのウォール街」。
そんな中に現れるのが、煤けたコンクリートの壁、不規則に増築された鉄格子のバルコニー、外壁を這う無数の電線…こちらが、カフェの入居する「Chung Cư 14 Tôn Thất Đạm（トンタットダム14番地アパート）」である。
アパートの目の前には、フランス植民地時代から続く重厚なコロニアル建築「ベトナム国家銀行」が鎮座しています。ウェディングフォトの撮影スポットにもなる優雅な場所なのだが…道路を挟んだだけでこのギャップよ。
アパートの入り口は、屋台や看板で埋め尽くされておりますが、気にせず入っていきましょう。
こちらのアパート、一見廃墟のような見た目でありながら、その実イマドキなカフェやショップが沢山入居する最先端スポット。この手の所謂「カフェアパートメント」はグエンフエ通りのものが有名ですが、こちらはオルタナティブな退廃美を楽しめます。
とはいえ、再開発が続くホーチミン市中心部のこと。この光景がいつまで見られるかは分かりませぬ…。この独特の空気を楽しめるのは今だけかも。
このアパート最大の試練、それはエレベーターがないこと。薄暗く、グラフィティで埋め尽くされた階段を息を切らしながら登っていくにつれ、周囲の喧騒が遠ざかり、静けさが増していきます。
ようやく辿り着いた最上階である4階。日本的には5階かな？
そこは剥き出しの配線や錆びた梯子が残る、まるで工事現場か、はたまた廃墟のようなインダストリアルな空間です。
しかし、その薄暗い廊下の奥に、ひとつだけ異質な光を放つ看板が。
白い正方形に、赤いロゴマーク。ここがただの廃墟ではないことを静かに主張しているのだった。
「Make Room – Tôn Thất Đạm」の内装
と、いうことでこちらが「Make Room」の3号店。ドアを開けた瞬間、外の無骨なコンクリートの世界が一変します。
目に飛び込んでくるのは、グリーンのカウンターと温かみのある木のインテリア。落ち着いたダークブラウンのフローリングに、ラタン編みの背もたれがついた椅子。店内はミッドセンチュリーモダンな雰囲気で統一されています。
まるでアーティストのアトリエ兼リビングのようなリラックスした空気感。1号店・2号店のデザインコンセプトを、ここでも継承しています。
天井の高さを活かしたロフト席もあり、上から店内の様子を眺めながら過ごすこともできます。まさに大人の秘密基地。この大きな座椅子ソファに身を預けたら最後、立ち上がれなくなりそう…！
そして、店内奥の大きな窓に面したエリアにも注目。
窓際の席に座ると、目の前には先ほど見上げたベトナム国家銀行の荘厳な建築が広がっています。
ふだん下から見上げることしかできない歴史的建造物の、列柱や屋根のディテールを、この高さから、しかも涼しい部屋でコーヒー片手に愛でることができる…。素晴らしい贅沢ではなくて？
さらに、こちらのテラス席。テラコッタ色のレンガ素材を使った、ラスティックなバルコニーですが…。
ここからも向かいの国家銀行を、しかも何も隔てるものが無いなかで眺めることが出来ます。間違いなくこちらのお店のハイライト。
私が入店してからしばらくしたあと、「結婚式ですか？」と言いたいくらい着飾ったお嬢さん2人がやって来たのですが、席を立ったと思ったらドリンクがサーブされたあとも全然戻ってこない。何をしてるのかと思いきや、ずっとバルコニーで写真撮ってました。時間にして1時間くらい。
「Make Room – Tôn Thất Đạm」のメニュー
メニューはこちら。以前訪れた2号店のメニューと比較すると種類が絞られていますね。まあ、仕入れの都合もあるのかな？エレベーターが無い中、最上階まで材料を運ぶのも大変よね…。
とはいえ、ベトナムの伝統的なコーヒー文化と、現代的なトレンドをうまくミックスしたラインナップが並んでおり、「Make Room」のエッセンスは十分。
まずシグネチャーの「MELTED TIRAMISU」。とろりとしたクリームがたっぷりかかったビジュアルはインパクト抜群。ドリンクは、定番のベトナムコーヒーはもちろんひと捻りあるアレンジメニューも豊富。
ショーケースには、クロワッサンやスティッキーバンズなどのペストリーが並んでいます。どれもサイズが大きく、小腹満たしには十分なボリューム。
実食
「Cà phê đen（アイスブラック）」40,000ドンと、「Pistachio Sourdough Cinnamon（ピスタチオ・サワードウ・シナモン）」65,000ドン。国家銀行のクラシックな建築を眺めながらいただくわよッ！
私にしては珍しくコーヒーを注文。表面には黄金色の厚いクレマが層を成しています。
砂糖なし（Không đường）でオーダーしたその味は、ベトナムコーヒー特有のガツンとした苦味がありつつも、口当たりはまろやか。階段昇降で火照った体に冷たさと香ばしさが染み渡ります。
そして、このコーヒーに合わせるのがシナモンロール。表面はシロップで艶やかにコーティングされています。
サワードウ生地を使っているということ、ナイフを入れるとむぎゅっと押し返してくるほどの弾力を期待していたのですが…フツーにサクサク食感のパンで、サワードウっぽさは感じられず。
それでも、トップに贅沢に散りばめられたピスタチオのカリッとした食感と、鼻に抜けるシナモンのスパイシーな香りが良い。サワードウらしさを過度に期待しなければ美味しくいただけます。
「Make Room – Tôn Thất Đạm」の店舗情報
古アパート「Chung Cư 14 Tôn Thất Đạm」の最上階に位置する「Make Room – Tôn Thất Đạm」をご紹介しました。
観光客で賑わうグエンフエ通りのカフェアパートとは一味違う体験をしたい皆さん。トンタットダム通りの古い階段を登ってみれば、あなただけのサイゴンの時間が流れている…かもしれません。
息を切らして階段を登ったご褒美に、美味しいコーヒーと絶景、そして湧き上がる「自分だけの隠れ家を見つけた」という高揚感をエンジョイしちゃいましょう。
