ホーチミン市3区の閑静なエリアに佇む「Đông Phố (Dong Pho Restaurant / Nhà Hàng Đông Phố)」。
古都であるフエの宮廷料理の流れを汲む、洗練された料理を中心としたベトナム料理を提供することで人気のレストラン。上品な空間で本格的な中部ベトナム料理を味わえると、地元客はもちろん、多くの観光客や在住者からも支持されています。
こちらのお店、なかなかの老舗&有名店であるようですが、ホーチミン市移住2年半にして初めて訪れてみましたよ。併設されているジェラート専門店「Kem Tô Mì」も併せてご紹介します。
「Đông Phố」の場所・外観

「Đông Phố」が位置するのは、3区・ホースアンフオン (Hồ Xuân Hương) 通り。この近辺はおしゃれな外観かつ大型のレストランが多く、ツアー利用と思わしき観光客が集団で訪れている姿もよく目にします。

白を基調としたフレンチスタイルの建物はまるでヴィラのような見た目であり、上品で洗練された雰囲気が既に漂います。安っぽさのない、重厚ながらも静かで落ち着きの感じられる空間であり、入店前から期待が高まりますね。

事前に情報をあまり調べず訪れましたが、どうやらミシュランガイド2023・2024にも掲載された模様。星付きやピブグルマンとは異なり、あくまで「掲載された」だけなようなのですが、それでも「一定以上のクオリティを持つレストランである」ということの担保には繋がります。
「Đông Phố」の内装・雰囲気

さて、こちらの「Đông Phố」ですが、外装に違わず内装も素敵です。白い壁やアーチ状の開口部、木製の窓枠や鎧戸(ルーバー)のようなデザインが見られ、フレンチコロニアル様式の影響を感じさせるような格調高い空間。

木製の椅子やテーブルは、シンプルながらもどこかクラシックな雰囲気が漂い、椅子の背もたれのデザインなどが特徴的。ゆったりとしたソファ席も充実しており、リラックスできる空間を提供しています。ステンドグラスのような装飾や壁にかけられたアートも華やかで、視覚的にも楽しめますね。

なお、今回は6名で訪れたため、同行者が電話で予約をしてくれました。英語も通じたとのこと。公式サイトやFacebookのMessengerから予約が出来れば良かったのですが、特に予約フォーム等は見当たらず…。そもそも、公式サイトは放置されているようだし、Facebookの方も更新は停滞気味。
「Đông Phố」のメニュー一例

さて、メニュー。




古都フエの宮廷料理の流れを汲む、繊細で上品な味わいの料理がメインですが、ベトナムスタイルの洋食メニューもあり、料理の数は豊富。写真は撮りそびれましたが、フォアグラのソテーやパエリアなんてのも。


その他、お店に併設されているパティスリーのデザートを注文することが可能。チェーなどのベトナミーズデザートから、ケーキ・マカロン・ジェラートまで。バインフラン(ベトナムプリン)に至ってはローカルの6〜7倍ほどの価格ですが、むしろ食べてみたい。

お飲み物のメニューはこちら。しっかりしたレストランであることを考えれば、まあ妥当な価格か。何気にビールを4種類も揃える&他のドリンクと比べると良心的価格。
実食。なんとも丁寧&堅実なお仕事

「Nước ép bưởi(ポメロジュース)」90,000ドン。もちろん、砂糖など余分なものは添加されていないフレッシュジュースです。ポメロ、コンビニで売られているカットフルーツのものくらいしか食べたことが無かったのですが、美味しいポメロってこんな甘いんだね…。

ストロー、使用感に違和感を覚えたので、「再生プラスチックか何かかな?」と思ったのですが、時間が経つにつれ「しなり」が出てきました。これ…パスタだ。まさかの「食べられるストロー」だった。食べたいとは思えなかったけど。

「Bánh Bèo」150,000ドン。フエ発祥の「バインベオ」は米粉を使ったケーキであり、言わば一口餅。まさにザ・宮廷料理な、上品な盛り付けで提供されます。
フエのバインベオは、米粉で作られた餅、干しエビ、揚げた豚の皮、フライドオニオン、魚醤ベースのソースから主に成りますが、こちらは豪勢にもカニをトッピング。一口で頬張るとトッピングの旨味が広がり、もちもち・さくさくとした食感が楽しく癖になります。

「Mít Trộn」135,000ドン。熟していないジャックフルーツを使ったサラダとのこと。青いマンゴーやパパイヤのサラダのようなものを想像していましたが、実際のところは、刻んだジャックフルーツをきのこや香草などと炒め合わせた一品。

癖のない味わいで、日本人的にはきんぴらを思い出す、親しみやすい料理でした。トッピングのナッツやごま、別添えのライスペーパーも香ばしく、良いアクセントとなっています。

「Bánh Khoái」160,000ドン。フエスタイルのパンケーキであり、ベトナム式クレープ・バインセオと似た作り方ではあるものの、その生地の分厚さが特徴です。
なお当初、「Khoái」を「Khoai(芋)」と勘違いし、「米粉じゃなくて芋のバインセオなんじゃない!?」などと同行者にドヤ顔で話してしまったことを懺悔いたします(ベトナム人不在のためツッコんでくれる人が居なかった)。

ピーナッツがベースの濃厚なタレを付けていただきます。大きくぷりぷりの海老が挟まれていました。分厚い生地はザクザクと食べ応えがあり、バインセオとはまた異なる美味しさ。

「Nướng Thập Cẩm」520,000ドン。グリル料理の盛り合わせ、と言ったところでしょうか。揚げ物も含まれてはいますが。

ライスペーパーで、野菜・バインホイ(網状のシート状になった米麺を茹でたもの)・グリル料理を巻いていただきます。
…なんか、これまでの料理でも思ったのですが、仕事がとにかく丁寧。このバインホイも、その辺のローカル食堂で見られるものとは段違いにきめ細かい。牛肉をコショウ科の葉で巻いてグリルした「Bò lá lốt(ボーラーロット)」も、道端で売ってるものだとカピカピに乾いていたりしますが、こちらのものはしっとりジューシー。全体的に、過度な華美さは無くとも堅実な仕上がりのお料理となっています。

「Miến Xào Hến」150,000ドン。春雨とたっぷりのしじみの身を土鍋で炒めたものです。しじみの旨味がぎゅっと春雨に凝縮されておりますよ。
唐辛子のツンとした匂いが鼻につくかもしれませんが、実際はそれほど辛味はありません。中部料理=辛い、というのはベトナム人の間でも共通の認識なので少し警戒しましたが、食べやすさが優先されており一安心。

お会計はこちら。VATが加算され、総額2,565,200ドンでした。6人で訪れたので、単純に割れば1人あたり約428,000ドンということになりますね。
当然ながらローカルレストランより値は張るものの、エレガントで落ち着いた空間の中、静かにゆったりと食事を楽しむことができ、フエ料理をはじめとする多彩なメニューが味わえることを考えると、満足できるものだと思います。特別な日やビジネスでの利用、その他アテンドにも適していそうですね。
併設のデザート専門店でジェラートを
よし、じゃあ…ここからが本題(大嘘)。ジェラートを食べよう!

併設されているデザートショップ「Kem Tô Mì」は、「Đông Phố」の店内と繋がっています。レストラン側のデザインコンセプトを引き継ぎつつも、差し色のペールグリーンが可愛らしさを演出する店内。

少し年季を感じる部分もありますが、そのレトロさがまた心をくすぐりますね。

照明も凝っていますよね。細いワイヤーで多数のパーツが吊り下げられたそのさまは、繊細で優雅。クリスタル調の装飾が空間のアイキャッチとなっています。

「Đông Phố」のメニューで見られた、マカロンやケーキなどのペイストリー。お土産にしても良さそうですね。

注文すべきは何と言っても自家製のジェラート。1種類から、最大なんと5種類まで1カップに盛り付けてくれます。


見ているだけでココロ躍る、鮮やかな見た目のジェラートたち。ベリーやサワーソップなどのさっぱり系から、チーズケーキやキャラメルなどのこってり系まで、フレーバーは多種多様。アイリッシュコーヒーといった一風変わったフレーバーまでも扱います。

さらには「スティックジェラート」なんてものも。いやあ、美しい。

どーん、と出揃いました。なお、同行の皆さまにおかれましては「ブログ用に写真撮るでしょ?」といったお気遣いをいただき誠に感謝いたします。

私が注文したのは、「Cherry」と「Mango」の2種類。なお、マンゴーフレーバーについては、メンバー6名中3名が注文しており、その人気が伺える。

フルーツそのものの味わいを活かした、濃厚な甘み&ガツンと来る酸味。ただただ率直に、しみじみと美味しい。料理同様、デザートもまた丁寧な仕事ぶりでした。
「Đông Phố」での食事の流れから訪れても良いし、デザート目的で「Kem Tô Mì」だけ訪れても良い。ジェラート専門店はホーチミン市内に数あれど、さすがの老舗と言うべきクオリティでした。