火鍋というものがあります。中国の伝統的な鍋料理で、熱々のスープの中に様々な具材を入れて楽しむ料理です。豚骨や鶏ガラなどを煮込んだ白湯(パイタン)スープや、唐辛子や花椒(ホアジャオ)などの香辛料を効かせた麻辣(マーラー)スープが代表的ですね。
暑さに関係なくお鍋大好きな国民性のベトナムですから、バリエーションのひとつとして勿論火鍋もあります。とりわけ中国・四川省発の火鍋チェーン「海底撈(ハイディラオ)」などが大人気ですが、ふと、町中で名店に出会うことだってあります。
本記事では、ホーチミン10区の火鍋レストラン「Bone & Pot」をご紹介します。
「Bone & Pot」の場所&雰囲気

やって来たのは、ホーチミン10区・グエンチーフオン (Nguyễn Tri Phương) 通り。10区中心部から5区を通過し、8区方面まで至る通りです。

「Bone & Pot」の外観はコチラ。「有骨氣港式火鍋」とあり、5区の中華街からほど近いこともあってか、この辺りでは漢字が書かれた看板を多く見かけます。


店内。1階は華やかな赤を基調に、しっかりと装飾されています。同行者の中で「数年前に来た」という人が居たのですが、「当時はこんなに派手派手では無かった」とのことです。店員さんはシャツをビシッと着込んでおり、ちょっと高級そうな雰囲気。


一方、2階席は素朴というか簡素な内装。とは言え清潔感を損ねている感じではないし、肝心なのは料理の質ですものね。
「Bone & Pot」のメニュー紹介

「Bone & Pot」のメニューを見ていこう。思った以上にしっかりした作りのメニューでびっくり。え、ここ、チェーン店じゃないんだよね…?


複数人向けのセット鍋メニューもあります…が、「4−5人向け」かつ「スープが2種類」という条件に該当するセットが無い。しょうがないのでアラカルトで注文することに。

鍋のスープの種類は大変充実しています。中には、魚のお頭入りスープだったり肉骨茶(バクテー)スープなど、もはやそれ単体で一品料理として成立してしまうのは…?というものまであるのがスゴイ。


ツヤッツヤのお肉。果たしてこの通りに実物が出てくるだろうか?また、豚の脳みそ(※品切れ)や鶏さんのタマタマなど、しれーっと珍味具材をぶち込んでくるのも特徴です。豚の脳みそは、前に「Gà ác」を食べに行ったときにメニューで見たな。


複数人で行って具材のチョイスに困ったら、とりあえず「Combo」とか「Thập cẩm(=ミックス)」とあるメニューを片っ端から注文しておけば良いんじゃないかしら。


麺類もこんな感じで充実。一押しであろう「さつまいも麺(Khoai lang dẹt)」の他にも、うどんや、はたまたしらたきまで扱います。しらたき、コンビニでも買える程度にはベトナムでも広まってるけど、もっとあちこちで食べられるようになってほしい。ブン(丸く細い米麺)の代わりとして選べる、とか。ちなみに、白ご飯と生卵もあるので、シメに雑炊だって作れちゃいます。


あと、鍋以外の一品料理もあります。北部の蒸しクレープであるバインクオンの他、焼きそば・焼きうどん・炒飯など、炭水化物が充実。


ドリンクメニュー。華やかなフルーツティーが目を引きますが、アイスティー(Trà đá)なら5,000ドンから注文できます。
…メニューを見ていただいて分かる通り、高級レストラン然とした雰囲気とは裏腹に、全体的にすごくリーズナブルで良心的なお値段。そもそも鍋は複数人でシェアしますし、1人あたりの支払いは思ったよりも安く済みそうだな。
実食。通いたくなる味&価格、メニューの豊富さ


同行者が注文した「Bông Cúc(菊花茶)」30,000ドン。人数分のカップが提供されたので私も少し貰ったのですが、ほろ苦さがありつつも華やかですがすがしい香りが鼻腔に広がりました。無糖です。

鍋がやってくるまで、「Bánh Cuốn Sốt XO(XO醤バインクオン)」60,000ドンをつつきながら待ちます。
バインクオン=おやつ、のイメージでしたが、XO醤特有の魚介の旨味が組み合わさることで、こんなに上質な一品になるとは…。

鍋のスープがやって来ました。


我々が悩み抜いた挙句にチョイスしたのは、「Lẩu Tứ Xuyên(四川麻辣湯)」と、「Lẩu Thảo Dược(薬膳雞湯) 」。
やっぱ火鍋なら四川麻辣湯スープっしょ、というのと、薬膳スープなら辛さを中和できるでしょ、という雑な理由です。

そして具材も到着。なんとも見るからに新鮮そうで、ハリのある瑞々しそうな具材たち…。

ねえ見て、この艶めかしくキラキラと輝く魚介たちを。この海老とかもさ、冷凍ものじゃない新鮮な海老だってハッキリ分かりますね。

店員さんが手際よく具材を投入してくれます。こういうのはプロに任せるのが一番。

良きところで鍋の主導権が明け渡されました。あとはよしなにどうぞ、ということでしょう。今のところ、同行者(※上司)が葉っぱをちぎっては投入してくれています。

海鮮も投入したあとです。麻辣湯と薬膳鍋、どちらも準備万端。

まずは私の目の前にある薬膳鍋の方からいただきます。パンチこそありませんが、口当たりが良く、食材本来の旨味を引き出してくれます。不思議と飽きが来ず、いつまでも食べ続けられそう。


きのことイカのぷりぷりとした食感と絶妙な歯応えがたまらない。別添の薬味タレも提供されるので、そちらに具材をディップする or 具材の上に乗せて食べてもOK。味が濃くてこれはこれで癖になります。
ただし、辛味もあるので、麻辣湯スープと合わせることはお勧めしにくい…。

麻辣鍋もいただきます。…グエー辛い!

一口食べた程度ではそれほどでは無いのですが、食べ進めているうちに身体の穴という穴から汁が…(言い方よ)。特に、沈殿しているスープをお玉で掬ってよそうのは危険です。
ただまあ、本場で見られるような暴力的な辛さではないと思います。湯気を浴びても別に目は痛くならないし。


さつまいも麺、鍋に投入する前は調理後の姿が全く想像つかなかったのですが、煮込むとドゥルンドゥルンの柔らかい平麺に変身。

食感は、つるつる・モチモチ。これ、味噌鍋なんかにも合いそうだな…って、それは最早ほうとうなのでは。

手の汚れも厭わず、海老の殻剥きに真剣に向き合う同行者。締まった身、そして鮮やかな赤色…間違いなく新鮮な海老だ。

シメの麺を注文。「Mì Đậu Hù(豆腐麺)」にしました。
なお、このタイミングでスープの追加をお願いしたのですが、持ってこられるまでにやけに時間がかかっていたので「これ、課金されるやつ?」「てか、一から新しいスープ作ってるんじゃ?」と現場は多少ざわつきましたが、実際はスープベース(スープの種類によってベースは異なる模様)が注がれただけで、課金もされていませんでした。
というか、せっかくスープ足してもらったのなら、鍋の中身を持ち帰っても良かったのでは…(※貧乏性)!?まあ冗談ですが、でももし家の冷凍庫にこのスープがストックされていたら活用方法無限大ですよね。

豆腐麺、美味しいですよね。「ワシワシ」という擬音の似合う噛み応えある麺。腹持ちする感じもまた良し。
まとめ&「Bone & Pot」の店舗情報

お会計。5人で、そこそこお腹いっぱい食べて総額1,296,000ドン。1人あたり約26万ドンです。やっっっっっす!!!
なおこちらの「Bone & Pot」、同行者のひとりにとっては「この5年間ずっと訪れたかったけど、チャンスが無かった店」であるとのこと。まあ、鍋を食べに行くのは何人か集める必要がありますからね…。
何にせよ、人生のTODOリストをひとつ潰せたようで良かった。単なるタスクのひとつのつもりだったのに、それを拗らせた結果、タスクがいつの間にか「呪い」となって付きまとってくること、あるよねえ。
それにしても麻辣鍋、なかなかに辛かったな。ここいらで口直しにデザートを食べられるところは無いだろうか。

うん?道路の向かいにある店…

ハッ、「HONG KONG HANDMADE DESSERT」だと!?こうしちゃいられねえな!
…ということで、以前取り上げた「Panda Fa Fa」の記事に続くのでした。時系列逆再生…『桃華月憚』かな?(古い上にマイナー)