とどまることを知らない、ベトナム・ホーチミン市への日系飲食チェーン出店ラッシュ。在住者としてはこの上なくありがたい話ですが、私としては全くトレンドについて行けておりません!
そんな中でも行ってきました、「とんかつ和幸」。日本のとんかつチェーンの最大手が2025年11月、ついにベトナム初進出を果たしたのです!
とんかつ自体はローカル日本食レストランでも見られる程度にはポピュラーですが、プレミアムな高価格帯の専門店となると話は別。サクサクのとんかつに美味しいご飯、そして何より「おかわり自由」。あの、人をダメにしちゃう幸せな方程式がベトナムでも体験できる、だと…?
本記事では、ホーチミン市のショッピングモール「サイゴンセンター (Saigon Centre)」にベトナム1号店をオープンさせた、「とんかつ和幸 (Tonkatsu Wako)」をご紹介します。
「とんかつ和幸」の場所

記念すべき1号店がオープンしたのは、ホーチミン市中心地に位置する「サイゴンセンター (Saigon Centre)」の5階(L5)。高島屋が入居していることでもお馴染みのこのモールは、トレンド発信地のひとつ。週末ともなればリッチな買い物客で賑わう、煌びやかな場所です。

エスカレーターでレストランフロアへ上がり、少し進むと見えてくるのが、見慣れた和幸のロゴマーク。

お店の外観は、白木をふんだんに使用した明るく清潔感のあるデザインで統一。壁面には組子を思わせる幾何学模様の装飾があしらわれており、モダンでありながらも格調高い「和」の雰囲気を醸し出している。やはり1号店だけあって気合が入っているようです。

そして、我々(同僚さんと行きました)の視線を釘付けにしたのが、巨大なショーケースに並ぶ食品サンプルたち。この精巧なサンプル、日本のまんまやん…。

ベトナムではまだこれほど立派な食品サンプルを見かけることは少ない…と思います。ここだけ切り取ると、日本のショッピングモールのレストラン街にいるのかと錯覚してしまいそう。そりゃ凝視するわよ。
「とんかつ和幸」の内装

内装も外観同様、明るい木目調で統一されており、温かみがありつつも凛とした清潔感が漂いますね。天井には和紙の行灯風の照明が整然と並び、柔らかい光がテーブルを照らし、落ち着きを与えています。

座席はボックス席が中心ですが、1〜2人向けのテーブル席もあります。仕切りが高めに設計されているため、座ってみると思ったよりもプライベート感が確保されている。そうそう、こういう日本の飲食店ならではの感覚、忘れてたわい…。

店内の一角には子供用のハイチェアも用意されており、家族連れでも安心して利用できる配慮が。

お店の奥にはガラス張りのオープンキッチン。おそらく日本人がキッチンを取り仕切っておられるのだと思います。ホールの店員さんは基本的に英語をお話しになりますが、人によっては日本語も解されるのかな、と。

まずはお茶が提供されました。冷たいものと温かいものを選べます。
「とんかつ和幸」のメニュー






ということで、メニューはこちら(拡大してご覧ください)。皆さま気になるであろう価格帯ですが、主なメニューは以下の通りです(2025年11月現在・VAT別)。
- ロースかつ御飯:238,000ドン
- ひれかつ御飯:268,000ドン
- 大ロースかつ御飯:298,000ドン


現在のレートだと、日本での価格と同等ですね。一等地で日本と同じクオリティの食事ができることを考えれば良心的な価格じゃないかしら。海外進出で価格が上がるチェーン店もありますしね…。


他にも、海老フライやチーズ入りメンチカツなどを組み合わせた盛合せメニューや、熱々の「かつ鍋」、さらにはおもちゃ付きの「お子様とんかつ御飯」まで、充実のラインナップ。
そして、和幸といえばこれを語らずにはいられません。テーブルの壁には、私たちにとって最も心強い、あの(皆さまご存知)言葉が掲げられていました。

「ご飯・キャベツのおかわりはご自由にお申しつけ下さい」
声に出して読みたい日本語。ベトナムにおいてもこの素晴らしいサービスは健在でした。というかベトナムで「おかわり自由」ってかなり珍しい気がする。基本的に少量頻回食の国ですからね。文化として受け入れられるかどうかに注目。

しかも、メニューをガン見すると、ご飯は一人前ずつ専用の釜で炊き上げた「釜炊き御飯」で提供されるとのこと。いや、日本の和幸よりも豪華じゃないか!?

また、卓上には「とんかつの美味しい召し上がり方」というガイドが置かれており、ソースやドレッシングの使い方がイラスト付きで丁寧に解説されていました。とんかつに馴染みのないお友達を連れてきた場合も安心。
実食

来ました、「おろしロースかつ御飯(253,000ドン)」。ほ、ほわあ〜…。

粗めの生パン粉をまとい、こんがりと黄金色に揚がったカツ。ご丁寧に1切れだけをひっくり返した盛り付けでの提供ですが、肉汁がキラリと光るそのさまは見るからにジューシー。

そして、「釜炊きご飯」の存在感にもやはり目を奪われます。木蓋をそっと開けると、ふわっと立ち上る湯気と共に、お米の甘い香りが漂います。

しゃもじで茶碗によそうと、一粒一粒がしっかりと立ち、艶やかに輝く銀シャリが顔を出しました。なお、釜は熱いのでお気を付けくだされ。

一口食べればその違いは歴然。少し柔らかめながらもふっくらとした炊き上がりで、噛むほどに広がるお米の甘み。

で、メインのおろしロースかつ。たっぷりの大根おろしとネギが入った小鉢に、ポン酢ベースのタレを注ぎ、カツに乗せていただきます。
口に入れた瞬間、サクッという軽快な音と共に衣が崩れ、続いて豚肉の旨味が広がる。というか、肉、柔らか!厚みがあるにも関わらず、筋っぽさは皆無で、歯で簡単に噛み切れる柔らかさです。

あと、大根おろしのクオリティも高い。水分がしっかり絞られ「ぎゅっ」と凝縮された感じなのですが、大根の食感が残った粗めの仕上がりで噛み締めると瑞々しい。もはや、おろしとポン酢だけでご飯が食べられてしまう…。
ちなみに同僚さんは「ひれかつ御飯」を注文。程よく噛み応えのある、あっさりとした肉々しさが楽しめる一品だったそうです。

もちろん、卓上のとんかつソースとからしを使った王道の味も当然のように楽しみましたとも。

濃ゆい黄色をした、ねっとりとしたテクスチャー…これだけで質の良いからしを使用していることがわかりますね。濃厚なソースの甘みと、ツンと鼻に抜けるからしの刺激。これぞとんかつ、という力強い味わいは、やはり釜炊きご飯との相性が最高やで…。

付け合わせのキャベツも忘れてはいけません。

日本と同じく極細の千切りで、ふわふわの食感。卓上にはごまドレッシングとゆずドレッシングの2種類が用意されているのですが、特にゆずドレッシングが良すぎたのだった。

ベトナムで出会うドレッシング、大抵はこってりした且つ妙に甘い味のものが多いのですよね。オイル控えめで柑橘の効いたさっぱりドレッシングはめちゃくちゃ貴重!これ、レジ横とかで売ってくれませんかね?無限にサラダが食べれちゃう。ということでおかわりだ。

なお、定食には刻み漬物と、小鉢として豚肉の角煮が添えられていました。この角煮もほろほろで、これ単体でもメインを張れるくらいの実力。一口でお椀半分くらいのご飯は食べられるほどです。

汁物は豚汁。日本の和幸ではしじみ汁が提供されているので、ここは明確な違いかな。この豚汁もまた、出汁がじんわりと味蕾に染み渡るような丁寧な作り。大根・人参・ごぼうといった根菜もゴロゴロ入っており、嬉しい。
釜炊きご飯は大体お椀2杯分くらい。とんかつを始め、どのおかずもご飯泥棒なので「これはおかわり行けちゃうのでは…」と錯覚しますが、ゆっくり味わって食べていると何だかんだで満腹に。これはおかわりしなくても十分満足できる量だな…。

…と思いきや、同僚さんは食べ切らないうちにご飯のおかわりを敢行。それぞれの価値観で僕たちは生きています(価値観と言うか胃のキャパシティ)。「釜炊きなので提供には時間がかかります」とメニューには記載があったものの、実際には爆速で提供されたので、ピーク時はある程度数を仕込んでいるのかも。

そして案の定、食べ進める手を止めてしまう同僚さん。やはり無理だったか…。

ということで、お持ち帰り用のタッパーをいただきました。…いや、いくらベトナムで持ち帰りが一般的とは言え、おかわり自由のご飯を持ち帰れてしまって良いものなのか…!?
うっかり仕様の穴を突いた感がありますが、まあ持ち帰れる量はそのときテーブルにある最大1釜ぶんだけだし、大丈夫か…。何にせよ、美味しいご飯が無駄にならずに済んで何よりでした。
「とんかつ和幸」の店舗情報

「サイゴンセンター」にオープンした「とんかつ和幸」をご紹介しました。
洗練された空間、行き届いたサービス、そしてハイクオリティな料理。特に一人ひとりのために炊き上げられる釜炊きご飯の美味しさは、異国で暮らす日本人の心に深く染み入るものがあります。
価格は、まあローカルの食事と比べたら値は張りますが、たまのご褒美になら良いでしょう。月イチ…いや、月2くらい(結構多いな)。
あと、日本の「和幸」と比較しようと思い記憶を辿ったのですが…そもそも日本で和幸に行ったことあっただろうか。大丈夫?「新宿さぼてん」と混同してない?私以外にもそんな人、きっと居るはず。

なお、訪れたのは平日(水曜)夜でしたが、19時を回る頃にはフツーに満席になりました。しばらくは、ピーク時を避けた方が良いかも。なお、順番待ちはきちんとウェイティングリストで管理する運用になっているみたいなので公平かつ安心。日本人的には当たり前のことのように見えますが、ベトナムでは必ずしもそうではないので…。

