仏教の影響が色濃いベトナムでは、「Chay(チャイ)」と呼ばれる菜食文化が盛ん。特に旧暦の1日(新月)と15日(満月)は菜食の日とされ、敬虔な仏教徒ではなくとも月に2日はベジタリアン食とするベトナム人も多いように思えます。
そんな伝統もあり、ローカルな食堂からラグジュアリーなレストランまで、様々なお店がベジタリアン食を提供しています。
今回は、ホーチミン市3区のローカルエリアに佇む、まさに隠れ家的なベジタリアンレストラン「Tâm Hiếu Garden (Vườn Chay Tâm Hiếu)」をご紹介。
「Tâm Hiếu Garden」の場所・外観

ホーチミン市3区。ひっきりなしにバイクが行き交い、路肩には様々なローカル商店が軒を連ねる。そんなベトナムらしい生活感と活気にあふれた通りを抜けていきます。

「Cư xá Đô Thành」というエリアにやって来ました。「Cư xá」と付く住所、たまに見ますが、未だに何を指すかがあまり分かっておらず…ベトナムの住所、いろんな種類があって結構複雑。

どうやら、フランス統治時代、計画に基づいて建設された低層の住宅街を指すようですね。確かに地図で見ると、この辺りだけ四角形の地形となっており少し浮いている。

ふと現れた、目を引くおしゃれなファサード。温かみのあるレンガ調の壁、テーマカラーである鮮やかな緑色の看板、そして店名の「Garden」を象徴するように2階から豊かに垂れ下がる緑の植物たち…。こちらが「Tâm Hiếu Garden」です。
「Tâm Hiếu Garden」の雰囲気
店内は1階と2階に分かれます。

1階の客席はシンプルな木製のテーブルとベンチが並び、キッチンも見えるオープンな作り。お店の活気を感じながら食事を楽しめる、アットホームな雰囲気。

まるで八百屋のように、じゃがいもや玉ねぎが木箱にディスプレイされています。実際に購入したりもできるのかしら!?

2階へと上がってきました。階段は緑色のモダンな手すりが印象的ですが、それ以上に急…!足元には十分にお気をつけくだされ。

1階よりも広々とした空間。壁にはこのお店のフィロソフィーが感じられるアートが。蓮の葉と共に「Love」「Share」「Help」といったポジティブな言葉が満載です。

壁面はベトナムらしい絵画で装飾されており、竹やラタン製のランプシェードも良い雰囲気ですが、外観から想像していたほどの華美さは無い店内。その肩肘の張らなさも良いのかも…うおっ!?

目の前を何かがものすごい勢いで横切っていきました。なんぞ!?と思ったら小鳥さんだった。蛾とかじゃなくて良かったよ。お店の人も慣れっこみたいなので、もしかしたら看板鳥なのかも。
「Tâm Hiếu Garden」のメニュー







メニューを開くと、その品数の多さに圧倒されます。フォー、ブンボーフエといった定番麺料理から、鍋料理、炒め物、揚げ物まで、ありとあらゆるベトナム料理がベジタリアンで揃っているのです。ちなみに、卵は特に制限無く使用している模様です。


シェアが前提の大皿料理以外にも、一人で食べられるようなメニューがある点が嬉しい。とりわけ、「Cơm Phần」は55,000ドンでご飯+メインディッシュ+野菜+スープがセットになっており、大変お得。
破格!ベジ定食を実食

と、いうわけで「Cơm Phần」。

メインディッシュは「Kho(煮付け料理)」の中から選択可能であり、今回は「Nấm rơm kho đậu hủ(フクロタケと豆腐の煮込み)」にしてみました。

厚揚げを思わせる揚げ豆腐に、濃厚な甘辛タレの味がしっかりと染み込んでいます。たっぷりとかかった、スパイシーな粗びき黒こしょうが味を引き締める。

フクロタケ。日本では水煮など加工済みのものを除いて殆どお目にかかれない食材ですが、東南アジアではポピュラー。独特のプリプリとした食感がたまらない。

ご飯もふわふわで美味しい。長粒米だから食べ応えがあるし、味の濃いおかずによく合うなあ。

セットのスープは、ベトナムの食卓に欠かせない酸味スープ「Canh chua(カインチュア)」でした。こってり濃厚なメインディッシュとは対照的に、こちらは実に爽やかな酸味が特徴。

シャキシャキのキャベツやオクラなど、具沢山スープ。煮付けで濃厚になった口の中をさっぱりとリフレッシュさせてくれます。

完食。思いのほか量があり、お腹パンパンマンになったのだった。これだけのクオリティとボリュームで55,000ドン、まさに驚異のコストパフォーマンス。

ちなみに、飲み物として「Trà đậu – gạo lứt」15,000ドンも注文しておりました。豆と玄米のお茶。豆の香ばしさと玄米の仄かな甘みが感じられ、めちゃくちゃさっぱりしたお味。無糖であることも嬉しいね。