ホーチミン市にある数え切れないほどのベトナム料理店。料理のジャンルごとに専門店が多いのも特徴です。フォーならフォー専門店、バインミーならバインミー専門店、といった具合。
今回ご紹介するのは、ベトナム中部の名物料理「Nem nướng(ネムヌオン)」の専門店。Nem nướngとは、豚肉のつくね(Nem)を炭火で焼いた(nướng)料理で、これをたっぷりの野菜やハーブなどと一緒にライスペーパーで巻いて、特製のタレで食べればもう至福。
本記事では、「Nem nướng D’ran」をご紹介します。
「Nem nướng D’ran」の場所・雰囲気

やって来たのはホーチミン市旧3区・チュオンクエン (Trương Quyền) 通り。観光地としてお馴染みピンクの教会「タンディン教会」や、布地やナッツを購入しに日本人も多く訪れる「タンディン市場」からも近いです。

一本隣はハイバーチュン (Hai Bà Trưng) 通りですが、こちらのチュオンクエン通りは大通りの喧騒から離れた、ローカルな食堂やカフェ、商店が並ぶ比較的落ち着いたエリア。

お店の目印は、マスタードイエローの壁と、上部に掲げられた大きな木製の看板。店名の書かれたラスティックなデザインが印象的。間口がそのまま奥へと続いています。入りやすい雰囲気です。入り口からちらりと見える、奥のレンガ造りの壁も良いね…。
こちらの「Nem nướng D’ran」、ホーチミン市内に5店舗を展開するチェーン店であり、創業はなんと1968年だそう。ベトナム統一前…と考えると、遥か昔のことに思えてしまうな。

足を踏み入れると、外観のイメージ通り、レンガと木材を基調としたアットホームな空間が広がっていました。ブリック・スタイルの壁に、床はテラコッタ風のタイル張り。テーブルや椅子もダークブラウンの木製で統一されており全体的に落ち着いた雰囲気。
目を引くのが、奥にある2階へと続く螺旋階段。木製の手すりが美しい曲線を描いており、お屋敷のようなゴージャス感を演出しています。
「Nem nướng D’ran」のメニュー
「Nem nướng D’ran」のメニューは写真が添えられており、ベトナム料理に詳しくなくとも安心して注文できます。


メインは、お店の名前を冠した看板メニュー「Nem nướng D’ran」。自分で具材を巻いて楽しむ言わば手巻きセットで、人数ごとに注文できるようになっています。
- 1人前 (Phần 1 người):75,000ドン
- 2人前 (Phần 2 người):147,000ドン
- 3人前 (Phần 3 người):216,000ドン
- 4人前 (Phần 4 người):285,000ドン
これなら、一人でふらっと訪れても気軽に楽しめそう!


Nem nướng以外も充実しています。「シェフのおすすめ」コーナーがこちら。特にベトナム中部の郷土料理が充実していますね。


ライチティー、ピンクグアバティー、ピーチティーなどの各種フルーツティーに加え、「ノンアルコールブラックビアティー・タピオカ入り」といったユニークな創作ドリンクも。個人的には、甘くないドリンクがもう少しあると嬉しいかも。
看板メニューを実食

今回は2名で訪れたので、看板メニューの「PHẦN 2 NGƯỜI(2人前セット)」(147,000ドン)と、麺を食べたかったので「Bún Ba Khánh 100g」(15,000ドン)を追加で注文。鮮やかな黄色い大皿に、溢れんばかりの具材が美しく盛り付けられおり、テンション上がります。
内訳は以下の通り。
- Nem nướng(豚つくねのグリル):香ばしい焼き色がついたつくねが、スティック状にカットされています。
- 野菜&ハーブ:レタス、きゅうり、紫蘇(Tía tô)、スライスした青バナナ、千切りの青マンゴー(青パパイヤ?)、大根と人参のなます(Đồ chua)、ニラなど。とにかく種類が豊富。
- Vỏ ram cuốn:Nem nướngの隣にある、細いスティック状の揚げ物。ベトナム中部の揚げ春巻きの皮を巻いて揚げたものです。ちくわかなんかかと思った。
- ライスペーパー:お店のロゴが入った専用の紙袋で提供。

この料理のもう一つの主役が、「50年以上作り続けてきた」という、ピーナッツベースの特製ダレ。オレンジ色でとろみがあり、見るからに濃厚そう。なお、このタレおよびライスペーパーはおかわり自由だそうです。

さっそく巻いていきます。このライスペーパーは格子状の模様が入った、水で戻す必要がないタイプ。ライスペーパーを広げ、レタスを敷き、その上にNem nướng、追加のBún、きゅうり、なます、ハーブ、そして食感の決め手である「Vỏ ram cuốn」などを。

力強くタイトに巻きます。一切のすき間も作らないくらいの勢いで。

これを、濃厚ダレにたっぷりとディップして、いただきます。野菜の水分とタレで良い感じにふやけますよ。
まず感じるのは、Vỏ ram cuốnのザクザクした軽快な歯ごたえ。次に、香ばしく焼かれたNem nướngの弾力と豚肉の旨味。それらを、しっとり柔らかいBún(米麺)と野菜、スライスされた青バナナの渋みが包み込みます。
これら全ての具材を、ピーナッツや豚肉の旨味が溶け込んだような、甘じょっぱくコクのあるダレが完璧にまとめ上げるカンジ。

正直、それぞれの具材を単品で食べてもさほど感動は無い(むしろアクがある)のですが、合わさったときの絶妙すぎるバランス感よ。計算し尽くされている。
あと何が良いって、野菜が見た目通りに新鮮でシャキシャキなのですよね。野菜の水分とハーブの香りが、次の一口を誘います。
ローカルっぽさはあれど清潔感があり小綺麗な内装、日本ではさほど馴染みが無いであろう物珍しい料理、手で具材を巻いて食べるというエンタメ的な食事体験、英語をお話しになるスタッフ…と、旅行者にもおすすめできるお店。美味しいNem nướngが食べたくなったら、この隠れ家的な専門店をマストトライじゃぞ。

 
  
  
  
  