度重なる開業の延期に加え、日立がホーチミン市メトロ管理委員会 (MAUR) を提訴し賠償請求を行うなど、ホーチミンメトロ(ホーチミン地下鉄)1号線に暗雲立ち込める今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。
さて、メトロ1号線の延期やらなんやらの裏で、実はしれーっとホーチミンメトロ2号線の建設が動き出しています。
メトロ2号線の建設は、フェーズ1・2・3の三段階に分かれており、1区の「ベンタイン駅」からタンビン区の「タンビン駅」を結ぶフェーズ1は2030年までに完成し、その後2年間の瑕疵修繕・保証期間(2032年まで)が続く予定。なお、2020年時点では2026年完成予定でした。
2024年2月には着工式が行われ、建設に着手と相成ったわけですが、現時点では元請業者の選定もまだであり、ひとまず敷設予定地における電気・水道の移設や樹木の伐採(一部は移設)が進められている状況です。
そんな中、今の時点でひとつだけ完成しているものがあります。それは、フェーズ1の終点である「タンビン駅」より延びる、12区の「タムルオン車両基地 (Depot Tham Lương)」…の、隣の事務所ビル。
車両基地の周囲は開発が進められているらしく、街の発展を見越してか高層アパートなんかも既に建てられている模様。というわけで見に行くことにしました。そしてメトロ2号線が開業した暁には、この記事も歴史資料的な価値を持つはず…フヒヒ(妄想)。
【ホーチミンメトロ2号線】駅一覧(フェーズ1)
例によって、まずは2号線の駅一覧から。2号線の駅の総数は「42」とかなり多くなる予定なので、ひとまずフェーズ1で建設される予定の駅のみをご紹介。
ベンタイン市場前の「ベンタイン駅」から、3区のラウンドアバウト(民主広場)や統一鉄道のサイゴン駅を通過し、空港方面のタンビン区まで延びる、約10kmの路線です。
1号線は主に日本企業により建設が進められましたが、先述の通り2号線の元請業者は未定。業者の選定はプロジェクト管理を行うコンサルタントに依存していますが、現在、旧コンサルタントとの契約は終了している状況です。そのため、2024年10月にプロジェクト管理・工事監督のための新たなコンサルティング契約が締結される予定であり、その上で元請業者の入札が組織されます。着工は2025年10月~12月を予定。
# | 駅名 | ベトナム語 |
---|---|---|
1 | ベンタイン駅 | Bến Thành |
2 | タオダン駅 | Tao Đàn |
3 | 民主主義駅 | Dân Chủ |
4 | ホアフン駅(サイゴン駅) | Hòa Hưng |
5 | レティリエン駅 | Lê Thị Riêng |
6 | ファムヴァンハイ駅 | Phạm Văn Hai |
7 | バイヒエン駅 | Bảy Hiền |
8 | グエンホンダオ駅 | Nguyễn Hồng Đào |
9 | バークオ駅 | Bà Quẹo |
10 | ファムヴァンバック駅 | Phạm Văn Bạch |
11 | タンビン駅 | Tân Bình |
果たして、1号線のぐだぐだっぷりを見てもなお受注したいと思う業者が居るかどうかは謎ですが…。ドイツ復興金融公庫 (KfW) が融資に関わっている関係から、ドイツ系の企業が名乗りを上げるのではないか、という予想があったりなかったり。
なお、フェーズ2以降で予定されている路線の概要は以下の通り。新都市であるトゥーティエムから、戦争遺跡の「クチトンネル」でお馴染みクチ郡まで繋がる、一大路線となります。
【フェーズ2】
・ベンタイン駅(1区)からトゥーティエム新都市群(トゥードゥック市)まで接続
・タンビン駅(タンビン区)からアンスオンバスステーション(12区)まで接続
【フェーズ3】
・アンスオンバスステーション(12区)からホックモン郡を通過し、クチ郡まで接続
バスで「タムルオン車両基地」最寄りまで向かう
それではぼちぼち、2号線の終点を見に行きます。今回は路線バスの04番に乗車し、近くまで行こうかと思いますよ。こちらのカフェの取材後なので、フーニャン区からのスタートです。
運賃は6,000ドンです。バスの最後尾に座って分かったのは、思いの外揺れまくって酔うということ。なんか年々、乗り物酔いに弱くなっている気がするな…。
12区・チュオンチン (Trường Chinh) 通りで下車しました。では、ここから「タムルオン車両基地」を目指して30分ほど歩きたいと思います。
今朝、豪雨が降ったとは思えないほどの快晴ぶりだな…。むしろ雨で空気中の汚いあれこれが洗い流されたことにより、青い空が広がっているのだろうか。
徐々に溢れる郊外感。この辺のエリア、絶対不便でしょ…。
こんなところに日本食屋が。どんなクオリティなのか、突撃して確かめてみたかったのですが、残念ながらオープンは夕方からでした。
絶賛売り出し中の高層アパート
こちらのコムビンヤン(大衆食堂)を右に曲がると、周囲に不釣り合いな高層建築が見えてきました。
手前にある建物は、「STOWN THAM LUONG」という高層アパート。こちらを手掛けたSTCグループのWebサイトによると、2023年第4四半期より引き渡しが開始しているそうですが、その割に生活感が全く見えないのだが…。グランドフロアとかどう見ても工事中だし。
奥にあるのは「CTL Tower」というアパートメント。Vinaland Groupが手掛けるアパートであり、こちらは引き渡しが2021年であったことから、そこそこ入居者がいる模様です。グランドフロアにはWinMart+(ベトナム版「まいばすけっと」と思ってもらえたら)やカフェ等も既に入居しています。
きれいに整備されていますね。
いずれのアパートも、2ベッドルームはだいたい18億ドン(≒1,138万円)程度から、3ベッドルームは23億ドン(≒1,453万円)程度から販売されているようです。そりゃまあ周囲が発展したら便利だろうけども、現状何も無いからなあ。でも、どちらにせよ皆バイクで移動するからいいのか。
金額からして、ベトナムの中産階級に向けて建てられた物件でしょう(現在ベトナムでは中流層向けの住宅を増やそうとする動きがあります)。
気になるのは、いずれのアパートも「メトロ2号線直結」であることを宣伝している点。あれ、ここに出来るのって駅じゃなくて、車庫なんじゃないの…?そういや、「メトロ1号線と直結します!」と吹聴しておいて結局そうならなかった案件(※)もあったな…。色々と謎。
※補足:メトロ直結です!と宣伝し多額の資金を集めていた某コンドミニアムに対し、実際はメトロと掠りもしなかったことで入居者一同「金返せ!」と訴訟を起こしたものの、「あなた方が契約しているのはA社、現在コンドミニアムを管理しているのはA1社という別会社なので、訴訟は受け付けられません」と一蹴され泣き寝入りせざるを得なかった、という痛ましい事件があったそうな。
いまいち有効活用されていない事務所ビル
「STOWN THAM LUONG」と「CTL TOWER」の側に、メトロ2号線の事務所ビルはあります。
こちらの建物は2020年から使用が開始された、地下1階・地上7階建てのビル。将来的には、メトロ2号線の路線運行管理とタムルオン車両基地の運営センターとなる予定です。
2号線の建築開始後は、プロジェクト関係者やコンサルタント、国内外の専門家がこちらで業務に従事し、その総数は100名程度となる…そうですが、2024年3月時点での従業員はわずか30名と、未だフル活用されていない状況です。
車両基地建設予定地を見に行こう
ほんならまあ、車庫の建設予定地を見に行きましょうかね。
ここの空き地に「タムルオン車両基地」が建設されるようです。至る所にゴミが遺棄されており、時折鼻を刺すような悪臭が漂います。
勝手に入ってよいのかな…と思ったのですが、一応Googleマップに位置登録されているし、口コミを見ると凧揚げで遊んでいる人もいるようだから問題ないでしょう…。なんか言われたら「飛行機の写真を撮りに来たら、間違って入っちゃいました」でゴリ押すしかないな。
スマホから一眼に持ち替えて散策開始。いやー、長閑やね…(足元に転がるゴミから目を逸らしつつ)。
このような未舗装路であっても、地元住民にとっては通り道ですね。先頭の彼、日本語で「チャンピオン」と書かれたパーカーを着ているのですが、どこで手に入れたものか気になる…。
サッカーゴールがあるところを見ると、周辺住民の遊び場みたいな感じなのかな。この辺り、アパート以外にも昔ながらの住宅街があるし。
歩いても歩いても終わりが見えません。この辺までにしておこう…。
メトロ2号線事務所を裏側から臨む。UFOみたいな、ぐぐっと突き出た構造なんかを見ると金かかってそうだなーという感じですね…。
ところでさっきから私の頭上をラジコンみたいなのが飛び回っていて怖すぎるのですが。ドローンで監視とかされてないよね?誰かが練習してるだけだよね…?
どこか項垂れているように見える、電動自転車に跨った少年。こんなところで何してんだ…?と思いましたが、向こうも私を見て「こんなところで何してんだ…?」と考えたでしょうね。
最後に、車両基地建設予定地から2つのアパートと事務所ビルを臨んで終わりにしたいと思います。スマホカメラのパノラマ機能で撮ったよ。
なお、タムルオン車両車庫の完成予定イメージ図はこちら。アパートや事務所ビルらしき建物も、レンダリングで描かれていますね。
これが…?
こう…?
…
…2030年までに完成できるのかな。完成、するといいな…。
参考ページ
日立製作所がメトロ1号線の投資主を提訴、237億円の賠償請求 [経済] – VIETJOベトナムニュース
https://www.viet-jo.com/news/economy/240603225857.html
Metro số 2 Bến Thành – Tham Lương tuyến metro xuyên tâm dài nhất TP.HCM – Tuổi Trẻ Online
https://tuoitre.vn/metro-so-2-ben-thanh-tham-luong-tuyen-metro-xuyen-tam-dai-nhat-tphcm-20201202100659956.htm
Metro số 2 lùi đến 2030: Ngân hàng ADB, EIB, KfW có ý kiến về các khoản vay – Tuổi Trẻ Online
https://tuoitre.vn/metro-so-2-lui-den-2030-moi-xong-ngan-hang-adb-eib-kfw-co-y-kien-ve-cac-khoan-vay-20240311164750425.htm
Đầu năm triển khai thi công tuyến metro số 2 Bến Thành – Tham Lương – Tuổi Trẻ Online
https://tuoitre.vn/dau-nam-trien-khai-thi-cong-tuyen-metro-so-2-ben-thanh-tham-luong-20240217113501168.htm
Cao 7 tầng chỉ 30 người làm việc, chủ đầu tư đề xuất cho thuê tòa nhà vận hành metro số 2 – Tuổi Trẻ Online
https://tuoitre.vn/cao-7-tang-chi-30-nguoi-lam-viec-chu-dau-tu-de-xuat-cho-thue-toa-nha-van-hanh-metro-so-2-20240330145708566.htm
Bàn giao mặt bằng metro Bến Thành – Tham Lương trong tháng 6-2024 – Tuổi Trẻ Online
https://tuoitre.vn/ban-giao-mat-bang-metro-ben-thanh-tham-luong-trong-thang-6-2024-2024060917103826.htm