都市開発が急速に進むベトナム・ホーチミン市。しかし、その陰で古き良き時代の面影を残すレトロカフェが静かなブームを超え、一つの文化として定着しています。カフェチェーン「Cộng Cà Phê(コンカフェ)」がその代表格ですね。
古いアパートを改装した「Cư Xá」スタイルのカフェは単なる懐古趣味に留まらず、移り変わりの激しい街の中で、人々が心の拠り所や静寂を求める現代的なニーズの現れとも言えるでしょう。
そして、新たなレトロカフェがまたオープン…。本記事では、ホーチミン市タンディン街区(旧1区)のカフェ「Tiệm Cà Phê Cư Xá 30」2号店をご紹介します。
「Tiệm Cà Phê Cư Xá 30」2号店

お店が位置するのはタンディン街区。「ピンクの教会(タンディン教会)」や活気あふれるタンディン市場で知られるエリアですが、一歩路地(ヘム)へと足を踏み入れると、観光地とは異なる素顔のサイゴンが姿を現します。

どこか時代に取り残されたままの、生活感あふれる細い路地。目に付きにくいからなのか、Googleマップで見るとアヤシげなお店もありますが…まあそれはおいといて。

そんな中に突如現れるお店。こちらが「Tiệm Cà Phê Cư Xá 30」です。旧3区・スアンホア (Xuân Hòa) 街区にて既に1号店を展開しており、こちらは2号店。剥き出しのヴィンテージ感からは、バンコクのタラート・ノーイを想起させられる。

まず目を引くのは、ちょっと目がイッちゃってる青いイルカのゴミ箱と、その横に並ぶ原色のプラスチック椅子、そしてビールのプラスチックケースを積み上げたテーブル。

路上で見かける日常の風景ですが、ここでは意図的に配置されたデザインの一部として機能。ただのカフェではなく、ある種の「文化の集積地」であることを予感させます。
「Tiệm Cà Phê Cư Xá 30」の内装

1階は、ストリートの躍動感を引き継いだような造り。


打ちっ放しの壁には剥き出しの配線やグラフィティが踊り、一方で黄色いミニ冷蔵庫が。このラフさと生活感の同居が、秘密基地感があってワクワクしちゃうわね。

階段を上がり2階へ進むと、空気は一変。

そこは、70年代から80年代にタイムスリップしたかのような、しっとりと落ち着いたリビングルーム。壁面は何層にも塗り重ねられたペンキが剥げかけたような質感を持ち、深いアンバーの照明がそれを照らします。

十字の模様が美しい花ブロックから差し込む柔らかい光が印象的。

使い込まれた花柄のソファに身を沈め、ヴィンテージのカセットデッキやレコードプレーヤーが並ぶ棚を眺めたら、外の世界の時間の流れが止まったかのような錯覚に陥ります。

ちなみにオーディオデッキは日本(JVC)製なのだった。

さらに最上階の3階へと上がると、空間は一気に開放的に。現在はソフトオープン中のようなので、まだ整備中かな?

床一面に敷き詰められた、かつてのフランスの影響を感じさせる幾何学模様のセメントタイルが圧巻。作り物ではないリアルさがある。

壁に額装された旧い紙幣。1ドン札に、2ドン札に、5ドン札に…どれも初めて見ました。なぜかカンボジアリエルも混ざっている。

3階のバルコニー席はこのカフェにおける特等席。錆びた椅子に座り、目の前の隣家と共有するような距離感で路地を見下ろすと、ブーゲンビリアの花越しに日常が流れていくのが見える。

最上階は、別のショップが入居しているみたい。
「Tiệm Cà Phê Cư Xá 30」のメニュー

「Tiệm Cà Phê Cư Xá 30」のメニューはこちら。ソフトオープン期間ということもあり、ドリンクメニューの数が絞られている代わりに、価格は35,000ドン均一。
ラインナップは、ベトナムコーヒーの定番である「Cà phê sữa(ミルクコーヒー)」や「Bạc xỉu(ホワイトコーヒー)」から、搾りたてのオレンジジュース、さらには「Huda」や「Quy Nhơn」といったベトナム各地のビールまで幅広く揃っています。

この日は、ベトナムの定番スイーツ「バインフラン(プリン)」が用意されていた模様!試しておけば良かった〜。

プラスチックのカップで提供されるドリンクも、この飾り気のない空間には不思議と馴染みます。灰皿が供されるのも路上カフェの原風景ってカンジ。

