サイゴンの鼓動、Z世代の熱量。今最旬のファッションビル*11 Garmentory@カウキエウ街区

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縫製大国・ベトナム。世界有数のアパレル生産拠点であり、国内には多くの縫製工場や素材市場があるため、個人のデザイナーでも小ロットでクオリティの高い服を制作しやすい環境にあります。

近年はEコマースの急成長もあり、​多くのローカルブランドが実店舗を持たないオンライン限定のショップからスタート。SNSを通じて少部数から販売を始めるため、若手デザイナーにとって起業のハードルが非常に低くなっています。

そんなわけで盛り上がりを見せるベトナムのファッションシーン。そんな中、ホーチミン市・カウキエウ (Cầu Kiệu) 街区(旧フーニャン区)の静かな路地裏に、突如として巨大なファッション複合施設が登場。数多のローカルブランドが一箇所に集結しているというではないですか。

嘗て記事にもした通り、私はベトナムローカルブランドの服を愛用。もしかしたら新たなブランドとの出会いがあるかも?ということで行ってきました。

本記事では、ホーチミン市のファッション施設「11 Garmentory」をご紹介します。果たして、平成一桁生まれが着られるような服はあるのか(フラグ)。

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「11 Garmentory」の場所&外観

やって来ました、旧フーニャン区。中心部からは少し離れます。今回は路線バスでアクセス。

グエンディンチン (Nguyễn Đình Chính) 通り。ホーチミンらしい生活感が漂う場所ですが、一歩路地へと足を踏み入れると、常識が覆されることに…。

ローカルエリアに突然現れた、ガラス張りの超モダンな建築。これが…「11 Garmentory」!?

門構えに堂々と掲げられた白いタイポグラフィは、暗闇の中で灯台のように輝き、訪れる者に「特別な何かがある」と予感させるのに十分な演出。

来場者を迎えるのは、駐輪スペースをアーチ状に覆う立派な竹林と樹木。クールなコンクリート建築に温もりを与えるだけでなく、路地の生活感とハイエンドなファッション空間を繋ぐ緩衝帯として機能しているように見える。

1階。打ちっぱなしの美学

ということで入店。まずは1階から。

打ちっぱなしのコンクリートの床と壁、剥き出しの天井配線は、並べられた服たちの個性を最大限に引き出すための、いわば巨大なキャンバス。

空間にアクセントを加えているのが、シルバーメタリックの流線型ハンガーラック。直線(空間)と曲線(什器)の対比は、整然としながらもどこか有機的なリズムを感じさせます。

1階に並ぶブランドをざっと眺めてみたのだけど…かなり尖ってます。全体的には、世界的なトレンドであるY2K(2000年代)やサイバーパンクの影響を色濃く反映しているように見える。

視覚だけでなく触覚を刺激するタクタイル的なディテールが目立ちます。スマホの画面越しでも質感が伝わりやすい、SNS時代特有のデザイン戦略なのかもしれない。

オーバーサイズのジャケットやユニセックスなストリートウェアが主流。

レジ前にはアクセサリーやキーチェーンなど。こういう実用性度外視のデカいキーホルダー、嘗てのギャル文化(ストラップとか)を思わせて良いですね…と思ってたら、モチーフはまさかのコンドーム。何事!?

とまあ、これらの服はもはや日常着の域を超え、自分というコンテンツを発信するための「衣装」。

そんな、若者の自己表現に対する強烈な渇望から生まれる圧倒的なエネルギーを前に、手に取った服をそっと戻してしまう―そんな体験さえも、この場所の正解の一つであるかのように思えてしまう。

なお、1階で一番異彩を放っていたのがこちらのデニム。読み込み中のページをスクロールして画像の表示がバグったみたいなことになってる!?これ、実際に履いたらどうなるんだ…?ちなみに価格は300万ドンと、意外にもお手頃。

2階。ハイブリッドな温もり

2階へ上がると、コンクリートの世界にウッドフローリングや赤レンガが加わり、より洗練されたハイブリッド・インダストリアルとでも呼ぶべき空間へと変化します。

90年代〜00年代のストリートカルチャーを再解釈したスタイル。色鮮やかなロゴTシャツやスウェットパンツは、一見カジュアルですが、計算されたルーズなシルエットが特徴的。

夜のパーティーシーンを意識した、カットアウトの激しいブラックドレスやスパンコールアイテム。日常から離れた、特別な瞬間のための装備品としてのファッションです。勝負服であり、戦闘服なのである。

ファッションの熱狂を和らげるような雑貨コーナーも。アロマキャンドルやハットは、視覚的な刺激の多いフロアにおいて、嗅覚や感性に訴えかける癒やしのアクセントのような存在。

バッグもありますが、フェミニンなものが中心で、バックパックなどは無さげ。あとは靴なんかも置いてほしいのですが、ローカルブランドでフットウェアを手掛けているところって限られるんだよな。難易度が高いのか、コストがかかるのか。

1階はほぼレディスファッションでしたが、2階はメンズ・レディス半々くらい?ユニセックスなものも含みます。

襟付きのシャツを見つけた!と思い手に取ってみると…主張の強いグラフィックにタイポグラフィに、ド派手なスタッズ使い…。き、着れない。

スウェットパンツにステテコ(喩えが酷い)をレイヤードしたような、個性的なボトムス。

軽く羽織れるようなジャケットなんかも欲しかったのですが…常夏のホーチミンでいつ着るねんと言いたくなるような厚手生地ばかりなのですよね。つくづく、お洒落は気合であることを思い知らされる。

こちらの「STRESSMAMA」のビッグTなんかは、デザインにもよるけど普通に着れそう。シルエットが綺麗。

とまあ、過激なデザインの奔流を泳ぎ切りヘトヘトに。ただ、どれも質はとても良いと思います。Z世代の感性とこだわりがぎゅっと詰まったデザインに、しっかりした縫製。安価な大量生産品やパチモノではなく、本当に良いものを作って売ろうとしているのだなあと。

併設カフェ「The Muse.」

平成一桁ガチババ…じゃなくてアラサーY世代がようやく自分の呼吸を取り戻せる場所にやって来ました。それが2階に併設されたカフェ「The Muse.」。

白いタイル張りのカウンターに、温かな光を放つミッシュルームランプ。ウッドシェルフにはラナ・デル・レイやテイラー・スウィフトのアナログレコードが飾られ、このカフェだけが時を止めたようなノスタルジーに包まれている。

『KINFOLK』誌やレトロな「OKINAWA」ポスターが置かれたその空間。ファッションフロアの尖った感性を優しく包み込む、大人のための逃げ場なのだった。

「The Muse.」のメニューはこちら。意外にも価格はお手頃です。

Trà Dâu Tằm(マルベリーティー)」55,000ドン。マルベリーの自然な酸味と甘みは、買い物の合間のリフレッシュに最適でした(※何も買ってません)。無料のWi-Fiも完備されています。

「11 Garmentory」の施設情報

ホーチミン市のファッション複合施設「11 Garmentory」をご紹介しました。

多くの若者で賑わうこちらのファッションビル。これまで画面越しにしか見られなかった多くのブランドが「実際に触れ試着できる」場を提供したことで、一気にファンが実体化したと言えます。この場所の本質は「消費」ではなく「体験」にあるのかもしれない。

残念ながら私が着れるような服が一着も無かったわけですが…若者たちのステートメントとしてのファッションを俯瞰しつつ、カフェで一息つくという貴重な経験が出来ました。

そんな、世代を超えた感性の交差点。路地裏で力強く輝く「11 Garmentory」を、貴方も覗いてみては。

ちなみに私が今まで購入したローカルブランド服の一例がこちら。そもそもの前提からして、「BY COTTON」や「MR.SIMPLE」などのキレイめかつ流行に左右されないミニマル系のブランドを好むような人間はお呼びでないのだった。

お店の名前 11 Garmentory
住   所 117B Nguyễn Đình Chính, Cầu Kiệu, Hồ Chí Minh
営 業 時 間 10:00 〜 22:00
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