ベトナム南東部・ビントゥアン省 (Bình Thuận) に属する離島「フークイ島 (Phú Quý)」。省都・ファンティエット (Phan Thiết) から、南東約120kmの沖合に位置する離島です。
離島ならではの魅力と言えば、やはり透明度の高い海と美しい砂浜。個性的なビーチは島の各所に点在していますが、中でも島北東部の「ホンデンビーチ (Bãi Tắm Hòn Đen)」には、島の自然を活かしたオープンカフェが併設されており、見逃せません。
本記事ではフークイ島にある、開放的なビーチカフェ「An Tiêm」をご紹介します。
「An Tiêm」の場所&雰囲気

フークイ島北東部・レホンフォン (Lê Hồng Phong) 通りから、路地に入ったところ。駐輪場らしい駐輪場は無いため、ここにバイクを止めていきましょう。

「An Tiêm」は舗装路から少し入った場所にあります。ここで本当に合っているのか不安にもなりますが、厭わず進んでいきましょう。

道中は、自然のままの地形を活かしたワイルドな趣がありますね(ものは言いよう)。

「An Tiêm」に到着。茅葺き屋根のカウンターやパラソル、木製の椅子やテーブル、竹を編んだような椅子など、自然素材を多用した素朴で手作り感のあるデザインが特徴です。注文カウンターはオープンで、客席と一体化した親しみやすい雰囲気です。

また、砂浜にもテーブルや椅子が設置されており、海を間近に感じられる開放的な空間です。日差しを避けるためのサンシェードや藁葺き屋根もあり、日中でも安心。

目の前に広がる美しい海と空を眺めながら過ごせる、最高のロケーションです。視界を遮るものは無く、開放感MAX。
店名の由来?流刑の王子伝説

カフェの店名は、ベトナムの伝説に登場する王子「Mai An Tiêm(マイ・アン・ティエム)」が由来になっていると思われます。

Mai An Tiêmは、ベトナム建国の祖とも呼ばれるフン王の養子または廷臣であったとされています。ある時、王から与えられた富や地位は全て自分自身の力で得たものだと発言したことで不興を買い、無人島への流刑に処されてしまいます。

しかしある日、どこからか鳥が運んできた黒い種を見つけます。彼はその種を植え、育てると、やがて大きな緑色の果実が実りました。そう、スイカです。
Mai An Tiêmはスイカを栽培して食料とし、また、そのスイカに自分の名前と島の位置を記して海に流しました。やがて、そのスイカが大陸に流れ着き、それを発見した人々がその美味しさに驚き、Mai An Tiêmの生存を知ることになります。

この知らせは王の耳にも入り、王はMai An Tiêmの知恵と忍耐力、そして彼が本当に自力で生き抜いたことを認め、彼を許して本土へ呼び戻しました。この伝説が、ベトナムにおけるスイカ栽培の始まりとされています。

「An Tiêm」が伝説の王子の名前を冠しているのは、Mai An Tiêmが体現するような、困難な状況でも知恵と努力で道を切り開く精神や、自然の中で新しい価値を見出す創造性、そして訪れる人々に安らぎや新しい発見を提供したいという思いが込められているのかもしれませんね。…深読みしすぎ?
「An Tiêm」のメニュー


「An Tiêm」のメニューはこちら。コーヒー・フルーツティーの他、常夏の島らしいスムージーやジュースを扱います。メニューの左下には、先述の伝説を思わせる絵が描かれていますね。
なお、店員さんは外国人慣れしているようで、英語もお話しになります。島での滞在中、港を除いて唯一外国人を見かけた場所でもありました。というか、私以外の外国人は主にどこで何をして過ごしていたのだろうか…。

「Sinh tố xoài chanh dây yaua」60,000ドン。マンゴー+パッションフルーツ+ヨーグルトの組み合わせの、爽やかさ全開なスムージーです。氷がまじったシャリシャリとした食感も心地よく、まるでシャーベットを食べているかのような、良質なデザートドリンクでした。

そう言えば、一応トイレも併設されています。それも、水洗。自然とお友だちにはならずに済んで、安心した…。

帰り際、「あれ、さっきまで店員さんが5人くらいいたのに、いつのまにか2人に減ってるな…」と思いつつビーチに目をやったところ、外国人客と一緒に海に入って遊んでいました。陽キャすぎる…!

あと、ここに限った話ではないのですが、フークイ島、やけに砂浜にゴミが多いです。漂着したもの、処理しきれなかったもの、ゴミの種類には色々あるとは思いますが、手遅れになる前に何かアクションを起こしたい気持ちでいっぱい…。