ベトナム南部の商業都市・ホーチミン市に位置する「タンソンニャット国際空港」。
ベトナムで最も利用者の多い空港であり、国内外を結ぶ重要なハブ空港ですが、それ故に年間の旅客数は、今や設計時の想定人数を大幅に超過。慢性的な混雑が問題となっていました。
そこで、混雑の緩和を目的として建設されたのが新国内線ターミナルである第3ターミナル(T3)。T3の完成によりタンソンニャット国際空港の年間旅客処理能力は現在の3,000万人から5,000万人に増加すると言われています。
T3は2025年4月19日に開業し、現時点ではベトナム航空便の一部路線のみが既存の国内線から移っている、という状況です。当初予定より2ヶ月ほど早く開業したとのことで、未だに工事中のエリアも多いようですが、せっかくなので4月末時点での第3ターミナルの様子を見に行ってみることにしました。
本記事では、タンソンニャット国際空港・第3ターミナルへのアクセス方法、ターミナル間シャトルバスの乗り方、第3ターミナルの様子をご紹介します。
新国内線・第3ターミナル(T3)について
タンソンニャット国際空港では、これまで国際線(T2)と国内線(T1)の2つの旅客ターミナルが運用されてきましたが、慢性的な混雑の緩和を目的として、2025年4月19日に新たな国内線ターミナル(T3)が開業しました。

第3ターミナルは総工費11兆ベトナムドン(約608億円)で2022年末に着工。年間で2,000万人の旅客を処理できるとのこと。
立地について、既存の国内線・国際線ターミナル(T1とT2)は隣接していますが、T3は他の2つと距離があるため、移動にはターミナル間を結ぶシャトルバスを利用することになります。
現時点では、ベトナム航空のハノイおよびヴァンドン(クアンニン省)便のみが就航していますが、将来的にはベトナム航空およびベトジェットエアの全国内線がT3に移行するようです。
もともとは5月に全面移行を予定していたらしいですが、延期となった模様。まあ、流石に急ぎすぎだし、現実に即したスケジュールを立てるべきですな…。
第3ターミナルへのアクセス方法

ライドシェアサービスの「Grab」「Be」、およびEVタクシーサービスの「Xanh SM」では、既に第3ターミナルを目的地として指定することが可能です。

下車ポイントは、こちらの出発ターミナル。最上階が出発口というのは国際線(T2)と同じですね。
なお、これは四輪車を配車するケースであり、「GrabBike」などのバイクタクシーでもT3へ行けるかどうかは不明。第1ターミナルにはバイクタクシー専用の乗車 / 降車ポイントが存在しますが、同様のものがT3にもあるのかどうか…。

公共交通機関(路線バス)でのアクセスは現状不可。ただし、先述の通り、ターミナル間を結ぶシャトルバスが存在するので、路線バスでT2にアクセスしてからシャトルバスでT3へ移動…ということも、一応は可能です。
各ターミナルを結ぶシャトルバス

それでは、ターミナル間を結ぶ連絡シャトルバスをご紹介。シャトルバスは、ベトナムに縁がある人間であれば誰でもその名を知っている地場系巨大コングロマリット・ビングループが手掛けるEVバス「VinBus」による運行。運賃は無料です。
スケジュールは15~20分間隔で、午前4時30分から深夜12時35分まで運行するとのことです。移動の過程で空港周辺の公道を走行するため、特に朝と夕方のラッシュアワー時の交通渋滞には留意しておきましょう。
シャトルバスのルートは、T2(国際線)→T1(国内線)→T3(新国内線)→T2(国際線)… となっています。
国際線・第2ターミナル(T2)乗車口

第2ターミナルでのシャトルバス乗車場所は、空港バスなのに旅行者には分かりにくいことでお馴染み109番などの路線バスの出発場所と同様。到着口を出て、横断歩道を1回渡ったところですね。

T2でしばらく停車したのちに発車するので、バスに乗車して待っておきましょう。
国内線・第1ターミナル(T1)乗車口

第1ターミナルでの乗車場所はこちら。

大きく「BUS STOP」という看板が掲げられているので分かりやすいですね。ただ、T2もそうですが、シャトルバスの案内が一切無いというのが解せない…。
新国内線・第3ターミナル(T3)乗車口

そして、新ターミナルである第3ターミナルの乗車および降車場所はこちら。1階の、ずらりとタクシーが並ぶエリアの一角に停車します。ちょうど「18A」または「19A」の柱のあたりですね。

近隣にはエレベーターまたはエスカレーターがありますので、到着したら上階の出発ターミナルへと移動しましょう。
シャトルバスに乗ってみよう

それでは、試しに国際線の第2ターミナルからシャトルバスに乗ってみましょう。バスの中でしばし待機。

出発しました。そしてすぐに国内線・第1ターミナルに停車。T1での停車時間は短いので、ここから乗るつもりの方は注意。

そして一度、空港の敷地から出て、公道を走ります。まずは空港前の大通りである、チュオンソン (Trường Sơn) 通りを南下。

右折し、ハウザン (Hậu Giang) 通りを進みます。道は狭いわ歩道は未舗装だわで、一気にローカル感が溢れてきたな…。「空港のターミナル間を結ぶシャトルバス」から見える光景には思えない。

さらに左折し、タンロン (Thăng Long) 通りへ。

ファントゥックズイエン (Phan Thúc Duyện) 通り。ようやく開けた通りに出ました。

18E通りという簡素な名の通りを経て、ようやく第3ターミナルへと到着。いや、結構遠いな!?
地図だけだと、T1・T2と隣接は無いにしても徒歩圏内かと思っていたのですが、一度公道に出る関係上、かなり離れています。
3階:出発ターミナル(Departure)

それではいよいよ、空港の内部をご紹介。まずは真新しさ漂う出発ターミナルから。

なお、先述の通り、現時点ではベトナム航空のハノイ便しか運航されていない関係上、ゲートはこちらの「D5」のみが開放されています。

誤って奥のゲートまで行かないように注意。閉まってました…。

ターミナルに隣接するようにして、ホテルやショッピング施設、飲食店街などが開業するようです…が、いつになることやら。一応、ガワは完成しつつあるように見えますが。

そしてこちらが、出発ターミナルの内部!

曲線を活かしたデザインが美しいですね。これは、ベトナムの伝統衣装・アオザイからインスピレーションを受けたとのことで、自然光を屋内に取り込みながら、重層的な美しさを生み出す狙いだそうです。

古いが故に天井が低く閉塞的な第1ターミナルに比べると、開放的で良いですね。旅への気分を盛り上げてくれます。

チェックインカウンターは11から99までの、数にして計90、搭乗ゲートは計26を備えるようです。

と、言いつつ現在運用されているチェックインカウンターは全体のごく一部なのですが。

運行スケジュールを見ると…おお、見事にハノイ行ばかりです。ハノイ〜ホーチミン線はドル箱路線ということもあり、ほぼ30分間隔で運行されているわけですが、ハノイ便がT1から移るだけでも混雑は緩和されるのかな?

がら空きの空港、きっと今のうちしか見られない光景だな。この辺りのチェックインカウンターは、将来的にはベトジェットエアが使用するのでしょう。

誰も居ないトイレ。当然、真新しく綺麗です。

まだ飲食店が開業していないからか、お水を無料で配布していました。せめて、売店くらいは早めにオープンした方が良いんじゃないか。
2階:到着ターミナル(Arrival)

2階は到着口。ただし、タクシーやシャトルバスに乗車するためには、さらに下階へと移動する必要があります。特に見るべきものもないので、とっととエレベーターやエスカレーターで下りてしまいましょう。

いくつか車が停まっていますが、ほとんどが青いナンバープレート(政府関連)または赤いナンバープレート(軍隊関連)の車両であり、関係者車両以外は進入できないものと思われます。
1階:到着ターミナル・タクシー乗車口

タクシーおよび連絡シャトルバスの乗車ポイントである1階。ビナサン (Vinasun) タクシー、マイリン (Mai Linh) タクシー、Xanh SMといったタクシー群がずらりと並び、列を成しています。これらはいずれも安心して利用できるタクシー会社なので、ご心配なく。

今なお、あちこちで工事が進められています。


将来的にはカフェやレストランがオープンするようですが、これらも現時点では絶賛工事中。「Coming Soon」の言葉を信じ、早期のオープンに期待しましょう。
T3のGrab乗車ポイント(※開業時点)

Grabを含むライドシェアサービスの乗車ポイントはこの奥にある立体駐車場…なのですが、いまだ工事中であり、車両の進入が出来ません。

そのため、一時的な運用として、ずらりとタクシーが並ぶこちらのエリアから乗車することになります。Grabで配車できたら、ドライバーに「◯◯の柱の辺りにいるよ」とメッセージしてあげると親切かな、と。Grabのユニフォームを着たスタッフも待機しているので、何かあればサポートが得られるはず。
第3ターミナルからのGrabの乗り方について、詳細は上記の記事も併せてご確認ください。
まとめ

タンソンニャット国際空港の新国内線・第3ターミナル(T3)について、2025年4月末時点の状況をご紹介しました。
上述の通り、現時点ではベトナム航空の北部行き路線のみが就航していますが、将来的にはベトナム航空およびベトジェットエアの全国内線がT3に移行する予定(※ただし、一部の近距離路線はT1に残るとの話もあります)。


それに伴い、今後T1で運航される国内線は、VASCO・バンブーエアウェイズ・ベトラベル航空・パシフィック航空の4社のみとなります。
つきましては今後、ベトナム航空およびベトジェットエアの国内線を利用する場合、自身の搭乗する便がT1発なのかT3発なのか、十分に確認しておく必要があります。もしターミナルを間違えた場合、混雑時であれば移動に20〜30分かかることも想定されるため、注意しましょう。

また、現時点ではT3に飲食店や売店がオープンしていません。飲料水は無料で配布されているようですが、食事時の時間帯であれば事前に腹ごなししておく方が良いかも?
何にせよ、新ターミナルの運用は、当面のあいだは目まぐるしく変化するものと思われます。もし利用を予定されている方が居ましたら、ベトナムメディアによるニュースにも目を通しておくことを推奨します!
【参考情報】
- A closer look at Ho Chi Minh City airport’s new terminal before it comes alive (VNEXPRESS International)
- Vietnam Airlines delays full transfer of domestic flights to HCMC new terminal (VNEXPRESS International)
- VinBus vận hành tuyến buýt điện độc quyền kết nối ba nhà ga sân bay Tân Sơn Nhất (Tiền Phong)